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2024年09月07日(土)
『憑依』

『憑依』@新宿ピカデリー シアター6


実のところ皆それぞれギフトを持っているのよって思わせてくれるところもよかった。ひとりでは頼りない、でもチームを組めば……!

原題『천박사 퇴마 연구소:설경의 비밀(チョン博士退魔研究所:ソルギョンの秘密)』、英題『Dr. Cheon and The Lost Talisman』。2023年、キム・ソンシク監督作品。原題と本国の宣美の方が作品イメージに合っているように思いました。『憑依』というタイトル自体は原作ウェブトゥーンからとられたようですが、それにしたって日本公開版の宣美とキャッチコピーはめちゃ怖い。どんなおどろおどろしい話かと思って観る迄ビクビクしてたよ……。除霊コメディーです!(?)

インチキ除霊で報酬を得ているチョン博士とその助手。チョン博士は医学博士(医師免許も持ってる)としての知識を駆使して依頼人の心理を読み、助手は映像加工と音響効果で超常現象をつくりだす。ところがほんまもんの悪霊祓いの依頼がきて……。

実は博士は祈祷師の家系で、祖父と弟を悪鬼に殺されている。で、おじいちゃんが命を賭して封じ込めた悪鬼が力を取り戻し始め、周辺地域の住人たちに憑依して勢力を増してきてたんですね。博士は別の生業を選んで暮らしてたんだけど、ホントは祈祷師としての才能がすごくあって、悪鬼を倒す機会を伺っていた。という訳で博士、巻き込まれた(笑)助手、博士を育てたおじちゃん、そして悪鬼に取り憑かれた妹を救いたい依頼人が立ち上がります。

助手はいろんな仕掛けがつくれて爆薬も扱えるギーク。おじちゃんは博士のおうちに仕えていた太鼓の使い手。依頼人は霊が見える。皆が相談に行く仙女はマネジャーみたいなイタコを通して話すんだけど、このマネジャーって『AKIRA』におけるケイみたいな依り代ってことですよね。それを超能力というかはさておき、皆さんそれぞれの才を持っている。そういう、完全無欠じゃない存在が力を合わせて敵を倒すというところがよい。

怖いというよりドキドキワクワクハラハラ的なエンタメでした。悪鬼が式神を放つ仕掛けがカートリッジ式だったり(今気付いたがこれってウルトラセブンにおけるカプセル怪獣みたいなもんじゃん! 弱いというかあんま役に立たないとこも同じじゃん)、博士には祈祷師の才能があったと示す根拠が、護符の切り抜きがめっちゃ上手いとかいうシーンだったり(切り絵が上手〜!)と笑いどころも満載。いや護符づくりシーンは笑うところじゃないのかも知れんが、うまく切れない弟を手伝ってあげるお兄ちゃんの図というのが微笑ましくてな……。

茶化さず考えればその切り絵の才能だって霊が見えるのだって、分子レベルの視力があるとか動作が出来るとか、人間が本来持っている能力の延長な訳です。そういうのをバカにしない感じがよかった。スピにもいろいろあるよね!

そこで最初の話題に戻るんですが、これ夏休みに家族みんなでワイワイ観られる怪奇ファンタジーだよって宣伝した方がよかったんじゃないのか。剣のグッズとか出せば売れたんじゃないのか。ムビチケ購入特典が特製お護りカードだったの、いい線行ってたのに!(効能はありませんて注意書き付いてるのがまたよかった)

カン・ドンウォンが真顔で笑える演技をしてる(レイン・ステイリーばりの白目も披露。しかも何度も)ところも楽しかったし、『モガディシュ』で穏健な大使を演じていたホ・ジュノが悪鬼役でフンガーってなってる様子も笑えたし、助手役(自称副社長)イ・ドンフィがすごいいい味だったし、おじちゃん役キム・ジョンスもカサッとしててチャーミング。

博士のおじいちゃんと弟の話は出てきけど両親のことは軽く流されてたし、依頼人の両親が亡くなってるのはわかったけどそれはなんで? とか隙間の多いホン。シリーズ化を見越してつくってるんじゃないかなと感じたので、是非続編をつくってほしいものです! 面白かった!

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・憑依┃輝国山人の韓国映画
いつもお世話になっております。『パラサイト』の夫婦が出てくるってのは事前に知っていたので素直に笑ってましたがパク・ジョンミンが出てるのは知らなかったのでブハッとなった。客席のあちこちから笑いが上がってました

・『パラサイト』“地下室夫婦”パク・ミョンフン&イ・ジョンウン、『憑依』にカメオ出演 ┃ cinemacafe.net
キム・ソンシク監督「地下室夫婦には個人的な思いを持っていたので、彼らがもしも生まれ変わったら幸せであってほしいという願いを反映させた」
住んでる家も『パラサイト』のあの家に寄せてあるんだもん。ひとしきり笑って観たあとこの記事読んでしんみり……幸せになって!(泣)

・よだん。昔電気グルーヴがポンチャックのアーティスト李博士(イ・パクサ)とコラボしていたので、「博士」をすんなり「パクサ」と読むことが出来ました。『イルボン2000』といい、電気から韓国語を学んでいる