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2024年05月03日(金)
contact Gonzo『my binta, your binta // lol ~ flying objects in the skinland ~』

contact Gonzo『my binta, your binta // lol ~ flying objects in the skinland ~』@SusHi Tech Square


いやー、ホントようやく。映像作品は追っていたけど、やはり実際に体験した衝撃は大きいな。

最初にその名を聴いたのは舞台芸術からだったか現代美術からだったか……無人島プロダクションとの絡みもなかったっけか。その名の通りコンタクト(取っ組み合い、殴り合い)により受けるあらゆる感覚──演者の肉体的な痛みや傷、それを目撃する鑑賞者が受ける精神的なショック等──をパフォーミングアートとして提出するユニットといえばよいか。観たい観たいと思いつつ、気づけば10数年経っていた。活動を続けていてくれて有難い。てかずっと進化していたのだろうなあ。

かつて無印良品があり、Rugby World Cup 2019のファンゾーン(このときは東京スポーツスクエアという名称だったな)になり、その後しばらく空き家(だと思う)になっていた場所がいつの間にやらSusHi Tech Squareという東京都の施設になっていた。で、その『SusHi Tech Tokyo 2024』内の、『CCBT COMPASS 2024』中のプログラム……ということか? 流石公的機関のやることはいろんなものが絡んでいるのでややこしい。ええと正直にいうとサイトのUIもなんでこんなにややこしくするのかという……どこに何があるのか探すのたいへんです。とはいうものの、興味深い催しを開いてくれて有難うございますという気持ち。


参加申込頁にも、開演前にも「ウーファー(重低音スピーカー)8台を使用した100dBを超える大きな重低音(低周波)を公演中継続して使用します。心臓の弱い方やペースメーカーをご使用の方、妊娠中の方、小さなお子様など、身体的な影響が懸念される方は参加をご遠慮ください」というなんとも奇っ怪な注意があり、入口には自由に使えるよう耳栓が用意されていた。パフォーマンスを始める前には塚原悠也自ら「スピーカー前にいるひとはかなりキますんで、やばいと思ったら楽なところへ行ってください。立ち見じゃなくて椅子に座ってるから躊躇するかもしれないけど、自由に動いてください」と重ねてアナウンス。いやはや、ナメてました。「低音も爆音も大好物だし〜」と楽しく鑑賞していたんだが、ホントにすごい音圧でだんだん気持ち悪くなってくる。そういえば今三半規管弱ってるんだった…やばい……。慌てて普段から持ち歩いているライヴ用耳栓を装着、その後は安泰。いやー音に酔うとは!

身体に感圧パッドとマイクを装着した3人のプレイヤー。彼らが接触する度、その音と圧力が像を結ぶ。スピーカーから塊となって飛んでくる音と振動と、ペットボトルを投げ合ったり、ぐしゃりと握り潰したりする素の音のギャップ。ハードなビートとは裏腹に、軽やかに跳躍し、互いをリフトするプレイヤーたちの動きはダンスのよう。しかし摑み合い打ち合う皮膚は紅潮し、次第に打ち身や引っかき傷が見えるようになる。静まり返り、喰い入るようにプレイヤーを見守る観客。緊張感が持続する前半。

「こっから後半ですよー」。塚原さんの声でこちらも若干リラックス。プレイヤーにも笑顔が見え始める。というか前半も、誰が最初に笑い出すか、笑ったら負けみたいな緊張感もあったのでした(笑)。前半から解説として参加していた教授(細胞学だったか、行動学だったか失念)のトボけた口調にも笑いが起こる。真剣な話してるんだけどどうにもおかしみが……前述のクリスピー・クリーム・ドーナツの画像は、細胞分裂について解説するときに使われたもの。近所のイトシアで買ってきただろこれ(笑・テナントに入ってる)!

開演前、「ここら辺、果汁が飛ぶかもしれませんので来そうだったら逃げてくださいね」とこれまた奇っ怪な注意があった。手作りピッチングマシーンで果物を飛ばし身体にぶつけるコーナーが始まり、これかーと思う。身体に当たった果物は破裂し、確かに果汁が飛び散ります。潰れたみかんやぶどうをつまみ食べ乍ら、なおもコンタクトは続きます。誰がどんだけ至近距離で受けられるかの競い合いも始まる。関西のノリってやはり独特でオモロい。そうはいいつつ身体にはますます傷が増え、終盤では「あ、血が出てる!」なんて声も飛び、戯れるプレイヤーたちなのでした。塚原さんの「これで終わりでーす」でゆるりと終演。いやはや面白かった。



会場はいろんな催しで盛りだくさんでした。パフォーマンス観覧は事前申し込み制。無料です、太っ腹。アフタートークでは「これって税金でやってるんですか? 国の? 都の?」という思わず身構える質問が。塚原さんが丁寧に、応募から審査、採用の流れを説明してらっしゃいました。「募集もしていますので、どうですか」と呼びかけられた質問者、「え、お腹に果物をぶつけられる人を……?」と答えて大ウケ。ボケたのではなく本気でそう思ったらしい。それはイヤだな(笑)。

質問者の方は追及したいという訳ではなく、単にどういうところからお金が出ているのか知りたかったようでした。社会に余裕がなくなると、こういうことに税金を使うなんてけしからんと怒るひともいる訳でな……。活動資金が中抜きされず、アーティストに還元されるといいなと思いました。



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塚原さんはデザイナーでもあります。この『石のような水』の演出は松本雄吉だった。関西パフォーミングアートシーンの繋がりとかあったのかなと勝手に想像して幾星霜。松本さんが鬼籍に入られてもうすぐ8年。などと思っていたら……

・塚原悠也 接触を遊ぶ contactGonzo┃Performing Arts Network Japan
審査員のひとり、維新派主宰の松本雄吉さんが僕らの映像を見て「ええやんけ」と言ってくれたことを人づてに聞いて、それだけで十分だと思いました。
2011年の記事で松本さんとのことを話していた

・コンタクト・ゴンゾ 塚原悠也氏にインタビュー┃SHIFT
身体表現そのものへの興味は「それが誰の手にも入らない」ということにあります。
ルールがあるとすれば「顔面を拳で殴らない」ということでしょうか。予想外のことが起こっても、その事実をそのまま認識できるような「瞬発力のある脳」があることを願っています。