I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME
|
|
2023年07月30日(日) ■ |
|
『FUJI ROCK FESTIVAL '23』2日目 その2 |
|
『FUJI ROCK FESTIVAL '23』2日目 その2
■ALANIS MORISSETTE(GREEN STAGE)
2018年の来日公演は中止、2020年の『Jagged Little Pill』25th Anniversaryの来日公演もコロナで中止になってしまったアラニスが遂にやってくる。しかもフジに!
ここ最近のライヴはwebやSNSでチェックしていて、『JLP』セットで来ること、「Ironic」がテイラーへのトリビュートになることは予想出来た。アラニスはテイラーのことを公にはひとことも話していないが、ツアーでテイラー在籍時の映像を流し続けている。昨秋LAで行われたトリビュートコンサートでも、やはりひとことも話さず「You Oughta Know」を唄いきり、デイヴと固く長いハグを交わして帰っていった。喪失がどれだけのものだったか決して語らず、ファンとテイラーの思い出をシェアし続ける。そんな彼女が、フジでそれを見せてくれる。フーファイのTシャツを着たひとや、外国の人が続々とグリーンステージに集まってくる。
余談だが、これあちこちで話してるけど私が小林建樹を聴き始めたのって「窪田晴男とバカボン鈴木がつきっきり? フリーとデイヴ・ナヴァロを率いるアラニス・モリセットのようじゃないか、ということはきっとすごい才能に違いない!」というのが始まりだったのです。そう考えると小林さんに出会えたのはアラニスのおかげ。有難う有難う。
スクリーンに映し出されるのは彼女のヒストリー。子役時代の映像、MAVERICKとの契約後のライヴ映像、TVショウの映像、物議を醸した(?)あの全身タイツの映像も。これって個人的にはWAHAHA本舗で見慣れていたのでむしろ馴染み深かったのですが(笑)。ミュージカル作品になった『JLP』の様子も流れる。幼い頃からショウビズの世界に身を置き、センセーショナルに持ち上げたあとにすぐ落とすマスコミ、メディア(日本もな。『Supposed Former Infatuation Junkie』が出たときのRO誌の記事とかよく憶えてるわ)から距離を置き、信念を曲げずに歩んできた彼女の傍にいた大切な仲間たち、そしてファンたち。そんな彼らの25年(+3年)が、凝縮されて目の前に現れる。時間が戻る、しかし失ったひとたちは戻ってこない。
歓声とともに、彼女は颯爽と現れた。目の醒めるようなイエローのTシャツにはスパンコールでブラックパンサーが描かれている。そしてジーンズ、adidasのスニーカー。普段着のような姿で、自然体の彼女がハーモニカを吹き鳴らす。歌を唄う。それは特別なものになる。アラニスだ、アラニスだ、アラニス・モリセットの歌声だ!
「All I Really Want」でスタート、あっという間にシンガロング。『JLP』から一気に4曲。終わって確認してみたら、16曲中半分の8曲が『JLP』から。聴いている最中は「ほぼ『JLP』! 『JLP』からこんなにやってくれるなんて!」と思っていたが、オリジナルの最新作『Such Pretty Forks In The Road』からのナンバーもバランスよく入り(最新リリースの『The Storm Before the Calm』はコンセプトアルバム)、映画『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』『シティ・オブ・エンジェル』に提供した楽曲も披露と、アラニスの現在・過去・未来を一望するような内容になっていた。セットリストに「Segue」とある通り、曲間を殆ど空けずに次々と唄っていく。
マイクを両手で持って唄う。前腕の左腕にはトラ、右腕にはフクロウのタトゥー。かわいい。髪を振り乱して唄う姿は連獅子の毛振りのよう。両手を拡げてくるくると廻り、ステージ上にちいさな竜巻を起こす。ぐるぐる廻ったあとにもバランスを崩さず動きまわる。竹中直人の「まっすぐ歩ける!」ネタを連想し、思わず笑ってしまう。
それでもずっと泣いていた。自分でも驚くくらい泣いた。思い出もいろいろあるけれど、何より彼女のあの声を聴けたことがうれしく、彼女が笑顔だったことがうれしく、テイラーがいないことに泣いていた。そして「Ironic」がやってきた。スクリーンに、まだ髪の短いテイラーが現れる。若くて、よく笑い、メンバーとふざけ合ったり、真摯にリハに取り組むテイラー。フーファイ加入のためバンドを離れる迄、多くの時間をアラニスとともに過ごしたテイラー。映像をバックに、アラニスは優しい笑顔で力強く唄い聴かせる。
And yeah, life has a funny way of sneaking up on you And life has a funny, funny way of helping you out Helping you out
スクリーンにはテイラーの笑顔、そして「In memory of Taylor Hawkins」の文字。歓声が上がる。
放心する間もなくステージは続く。終盤が近付く。「You Oughta Know」では大歓声でシンガロングが起こる。白人男性が野太い声で「You Oughta Know」を大合唱する図というのがもうおかしいのだが、そんな光景があちこちで見られる。近くの白人男性の声がデカい(ずっと・笑)。ああ、こんなに気持ちの良い野外で、アラニスのことを大好きなひとたちと一緒にアラニスの声を聴けるなんて、なんて日だ! 笑ったり泣いたり忙しい。
最後は「Thank U」。お別れの時間だ。2020年にハッシュタグ「#jaggedlittlepill25」で集められたツイートの画像がスクリーンに流れる。リアルタイムで『JLP』を聴き、今は母親になっている様子の女性、家族と一緒に笑顔で写真に収まるひとたち。皆が彼女の歌を聴き乍ら歳をとり、アニバーサリーを祝福し、互いにThank Uを交わしている。来てくれて有難う。テイラーとの思い出を分けてくれて、本当に有難う。
--- Setlist(setlist.fm)
01. All I Really Want(『Jagged Little Pill』) 02. Hand in My Pocket(『Jagged Little Pill』) 03. Right Through You(『Jagged Little Pill』) 04. You Learn(『Jagged Little Pill』) 05. Diagnosis(『Such Pretty Forks In The Road』) (Segue) 06. Reasons I Drink(『Such Pretty Forks In The Road』) 07. Head Over Feet(『Jagged Little Pill』) 08. Nemesis(『Such Pretty Forks In The Road』) (Segue) 09. Perfect(『Jagged Little Pill』) 10. Ironic(『Jagged Little Pill』) 11. Sympathetic Character(『Supposed Former Infatuation Junkie』) (Segue) 12. Smiling(『Such Pretty Forks In The Road』) 13. I Remain(『Prince of Persia - Sands of Time』ost) (Segue) 14. You Oughta Know(『Jagged Little Pill』) 15. Uninvited(『City of Angels』ost) 16. Thank U(『Supposed Former Infatuation Junkie』) ---
・苗場にお帰りなさい、そして、フジロックへありがとうを ALANIS MORISSETTE┃FUJIROCK EXPRESS '23
・アラニス・モリセットが語るメンタルヘルスとの闘い、大ヒット作『ジャグド・リトル・ピル』の記憶┃Rolling Stone Japan 「中毒に陥っている人に凄く共感するんです。こうした人びとは回復しようともがいているだけでなく、他人から裁かれることにも苦しんでいますから。」 「すごく孤独だった。当時は、どんなフェスに参加しても、72組の男ばかりのバンドにひとりだけアラニス・モリセット、っていう(笑)。」 2020年、『JLP』25周年に際してのインタヴュー。彼女は痛みを知っている
積極的にSNSで発信するタイプではない彼女が、画像とともにメッセージを投稿してくれたこと、とてもうれしい。
-----
再びオレンジ、ダラダラする。UA…観るつもりだったが……。オレンジからはヘヴンの音が丸聴こえなので、音だけ聴く。「太陽手に月は心の両手に」だ〜、おお「お茶」! からの〜「微熱」! 鉄壁のアンサンブルによる演奏の強さよ、すげー格好いいな……と思っていたら、「閃光」が聴こえてきて思わず立ち上がる。ハラカミくんがバックトラックを作った曲。これだけはほぼ音源ままだった……うれしい。有難う。「プライベート・サーファー」、「情熱」ときて最後は「ミルクティー」。堪能。て、そこ迄聴くなら観に行きなさいよ。
そろそろグリーンに行きましょう。ホワイト通ればVAUNDYちらっと観られるかなと思いきや、入場制限がかかっていた。まあ、そりゃそうか……。音を聴きつつボードウォークで移動。
さあ、FOO FIGHTERSが始まるよ。
|
|