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2019年05月25日(土)
『CITY』『神と共に 第一章:罪と罰』

『CITY』@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

街の「ヒーロー」の物語、という程度の情報しか入れずに観に行ったのですが、そういう「ヒーロー」だったんかい! と驚きました。なかなかに思い切った……ときどき我に返る箇所もありましたが、あ、そういう話ね! と了解すれば面白く観られた。以下ネタバレあります。

なんと、MARVELとかDCとかの、そういう「ヒーロー」だったんです。しかも結構な直球で。藤田貴大=マームとジプシー印の、各シーンのリフレインがタペストリーになっていく構成、日々のくらしの繰り返しから浮かびあがってくる登場人物の背景が、まさかそこへ結びつくとは。そのことが徐々に明らかになっていく途上では「んん?『AKIRA』?」と思ったのですが、いやいや全貌はアメコミヒーロー仕様でした。街を、ひとを救うのだもの。あるいは、彼らはそうありたいと夢想する若者たちなのか?

女性の右腕を集める「コレクター」、新しい街をつくりたい「あのひと」と、かつて同じ施設で生活していた「ぼく/おれ」「幼なじみ」の闘い。彼らは特殊能力を持っており、「ぼく/おれ」の「いもうと」は改造されて「兵器」になってしまう。施設の先輩だった「やどなし」や、「ぼく/おれ」の「(上司)作業員」、「ぼく/おれ」が飼っているねこのかかりつけ「獣医」といった大人たちも彼らに加勢して……。登場人物たちのバックグラウンドに対して事件のスケールがちいさく、アンバランスな印象ではあった。シリーズ化すれば「これはまだ序章だったのだ」といえるけど、一本の作品としては「ええ、あんだけ風呂敷ひろげておいてここで終わるの?!」と思ってしまう。女の子が「兵器」になるという流れもなあ……この辺り、前述の我に返る箇所。SFを舞台でやる難しさも感じました。

とはいえ、森永邦彦(ANREALAGE)によるスタイリッシュな衣裳(照明(南香織)に反応して色やパターンが浮かびあがる)、無機質なセット、音響や照明で表現した超能力の闘い、そして絵になる演者たち、というヴィジュアルはかなり見応えがありました。柳楽優弥、内田健司はものいう瞳と声の力で芝居をひっぱる。宮沢氷魚、井之脇海はロングコートが似合う長身モデル体型で、「異形の者」にふさわしい浮世離れした美しさ。青柳いづみの通る声と姿勢、菊池明明の長身痩躯も魅力的。續木淳平の佇まいには透明感があり、これは新しい発見。スケートボード、ミニセグウェイによる横断や、ポンコツ軽トラ、ねこを運ぶキャリーバッグの見立ては無機質なのに愛らしい。キャリーバッグよかったな、動物病院のシーンにならずとも「あー、あのなかねこが入ってる」と感じさせる形状とサイズ。

猟奇事件の犯人が獲物を集める冷蔵庫、Sigur Rós「Untitled 1」の使用、ボードのスライドによって表現される時間と空間の移動、といった演出は、この劇場、ということも含め蜷川幸雄作品、特に『海辺のカフカ』への返歌にも感じた。「あんたらは遅すぎる、待ってらんない」。そうして藤田さんはどんどん先に行くのだろう。「CITY」を救った彼らの活躍を誰も知らないなんて、ちょっと悔しいじゃないか。蜷川さん観たら喜んだろうし悔しがったろうな。

それにしてももはや専売特許、演者とスタッフにめちゃめちゃ負荷をかける(体力的に)藤田貴大作品。皆さんヘトヘトだと思います。この日はマチソワ。食べて飲んで休んで! 無事千秋楽を迎えられますように。

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・モチーフにしたと思われるMCUキャラクター
内田さんはまんまコレクターですね。宮沢さんはクイックシルバー、青柳さんはネヴュラかな。妹だし。じ、じゃあ井ノ脇さんはサノスか……ひぃー

・使用曲、といえば
Massive Attackの「Teardrop」がオープニングで流れてきて面喰らう。しかも聴いたことのないカヴァーver.で、ちょ、誰?! と心が千々に乱れ、序盤の台詞が頭に入らなくれ困った。帰宅後調べようとYouTubeで聴きまくったら逆に誰かわからなくなった…こんなに沢山カヴァーされてんのね……。José GonzálezかNewton Faulknerかなー。カーテンコールではオリジナルver.が流れ、Elizabeth Fraserの声に涙しました。人生のサウンドトラックの一曲です

・舞台でSF、といえば
ZAZOUS THEATERの『シープス』って傑作がありましたね(にっこり)

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『神と共に 第一章:罪と罰』@新宿ピカデリー シアター2


うう、新ピカでいちばん大きいシアター1にかかってるのにどうにもこうにも合う時間がなかった。という訳でシアター2で観ましたよ……しかし新ピカってのにもビックリしたしシアター1を押さえてるのにもビックリした。宣伝展開も予想より派手にやってて、配給の気合いの程が窺えます。いいぞいいぞ、2もスクリーン1でかかりますように〜、イ・ジョンジェの美貌をデッカいスクリーンで観たい。以下ネタバレしてます。

2017年、キム・ヨンファ監督作品。原題は『신과함께: 죄와 벌』、英題は『Along with the Gods: The Two Worlds』。あなた死ぬの初めてですか? ひとは死ぬと、冥界で7つの裁判を受けるんですよ。殺人・怠惰・嘘・不正・背徳・暴力・天倫の地獄裁判で無罪を勝ちとり生まれ変わりましょう! 私たちが弁護を務めます! あとふたり無罪にすれば僕たちも生まれ変われるんです! なあに、あなたは生前の立派な行いを認められた「貴人」だから、裁判も滞りなく進行しますよ……。殉職した消防士のもとへやってきた冥界の使者3人。消防士が亡くなって使者が迎えにくる迄10分もなかったんじゃなかろうか。とにかく展開が早く、怒濤の展開つるべうち。うはうは観てたら終わってしまった。140分超とは思えない体感でした。

まずは貴人のお札で冥界への入口をラクラク通過。この入口がまた自動改札みたいなの。こっからの各地獄がまー、レジャーランドのようで楽しい楽しい。ウォータースライダーみたいな川下りもあれば、氷のなかに閉じ込められたり砂のなかにうまったり。めっちゃ面白そうやん……。地獄観光最高だわ〜。荒唐無稽な物語を強力なヴィジュアルでエンタテイメントに仕上げる手腕が素晴らしい。ハリウッド映画へのオマージュもてんこもりで、インディ・ジョーンズ? ハムナプトラ? と元ネタに思いを巡らせるのも一興です。冥界の使者たちのファッションも素敵。マトリックスのようなロングコートを翻し、スター・ウォーズのような武器で闘う長身のふたり、ハ・ジョンウとチュ・ジフンの絵になること! 彼らとえらい身長差、キム・ヒャンギもとってもキュート。そうそう、ジョンウさんは初っぱなからモッパンシーンだったのであれはサービスショットですね(後述)。笑った。そして目玉、閻魔大王がイ・ジョンジェですの。ひぃ、黒くて悪いジョンジェさんといえば『観相師』で折り紙付き! 美・サイレント! そして実際観てみれば閻魔さまなのに悪くなかったというか、考えてみれば閻魔さまってひとの罪を罪だと判断するひと(ひとじゃない)なのよね。今回も謎を残しつつ、冥界の使者たちを未来へ導いていきそうな雰囲気ですよ。それにしても美しかった、どっからCGか境目がわからない状態であった。キャスティングしたひと有難う有難う。

そんな素敵三人組に案内される消防士くん、終始困り顔。演じるはチャ・テヒョン、『猟奇的な彼女』の彼ですよ。今度は異人たちに振り回されてます。なんだか生まれ変わりたくもなさそうです。ただ、現世に残してきた家族のことが気になる様子。そして裁判が進むうち、数々の罪状が明らかになってくる。ええ〜あなた貴人じゃなかったの? 困惑しつつも無罪を勝ちとるため、使者たちは調査を始めます。やがて彼を巡る家族の物語が浮上してくる。ハリウッド的ファンタジーを横糸に、人情物語を縦糸に。この設定にこのエピソードを絡めるかと驚くし、そもそもこの企画よく通ったなとも驚くし、でも大ヒットしたのには納得。ハラハラドキドキ、最後にはほろり。

ちょっと気にかかったのは、家族の話に父親が全く不在だったこと。これは次回『因と縁』に関わってくるのかな、公開が待ち遠しいよ〜。エンドロール後に続いてポストクレジットがあったんですが(この辺りもMCU=ハリウッドの手法を踏襲している)、なんとマ・ドンソクが登場です。なんか家に居着いてる神様らしい。うわ〜どんな展開を見せるの〜期待せずにはいられないよ!

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・神とともに:罪と罰┃輝国山人の韓国映画
役者とスタッフのクレジットが細かいところ迄載ってるのホント有難い。お母さん(イェ・スジョン)もお肌ピカピカでしたね…皆さんお肌綺麗……

・「먹방」(モッパン)の意味は?┃イキイキ韓国語・韓国生活
ほんといい食べっぷりなのよね。今回のごはんはまずいって設定なんですが、それでもばっくばく食べてる(笑)

・하정우 먹방 레전설

もうね…最高ですね……


ロン毛だったジョンジェさんが撮影現場で「閻魔オンニ(姉さん)」って呼ばれてたんですって。ナイスネーミングよ〜

・韓国語でも「うやむや」は「うやむや」っていうんだと知った。「瞬間」も同じ発音でした