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2019年01月10日(木)
『鈴木勝秀(suzukatz.)-190110/ホロン』

『鈴木勝秀(suzukatz.)-190110/ホロン』@SARAVAH Tokyo


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reading:篠井英介
music:大嶋吾郎
text:鈴木勝秀
lighting:倉本泰史
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サラヴァがクローズとのことで、久しぶりかつ(ここでは?)最後のこのシリーズ。ZAZOUS THEATER『Thirst』で、『オイディプス王』とともに引用された『ホロン革命』がテキストです。

スズカツさんも登壇しMacBookを操作。ステージ上の成り立ちは高円寺でやった横川タダヒコとの『TWO OF US』に近い感じでした。ただ、このときは各々やってることが視覚化されていたんだけど、今回はスズカツさんが何やってるか全然わからんかった(笑)。ノイズ/アンビエント担当かな? その場でテキストを抽出して篠井さんに指示を出してるのかな、とも思ったけど、篠井さんは綴じられていない数枚のプリントしか手にしておらず、モニター等を見る様子もなかったので、テキスト自体はあらかじめ用意されたものだったのだろう。篠井さんのリーディングと大嶋さんの演奏+ヴォーカルの丁々発止が聴けました。

余談だがスズカツさんと大嶋さんのMacBookを見乍ら、Macのりんごが光らなくなったのってある種の損失よねー。かわいくない。などと思う。スズカツさんはAppleの新製品に目がないひとのようなのでおそらく最新版。光ってませんでした(笑)。それにしても、すっかりMacも「ライヴで使える」機材になったなー。こういうところにも隔世の感が。先日90年代のクラブ事情を振り返る機会があったんですが、LIVE PA(当時ってライヴには「PA」ってついてたよねえ)でそりゃもうしょっちゅう音止まってましたもんね。

閑話休題。風邪をひいていた篠井さん、人力トーカーを駆使して? 地声なのに「Dig The New Breed」みたいなヴォーカルに(わかるひとだけわかってなたとえ)なっていていとたのし。いやいやご本人たいへんだったでしょうが、倍音がノイズみたいになっててすごい味わい深かったんですよこれが。テキストの内容がアレ(著者のケストラーは、これを書き上げたあと夫人とともに自死している)なので、時折人間じゃない何かが語っているようにも聴こえる、というか、そう聴きたいと思っているんだなあというこちら側の願望も自覚。『虐殺器官』を連想するセンテンスもあり、これは実際に『虐殺器官』からの引用なのか、それとも『ホロン革命』にあった文言か……伊藤計劃はケストラーの著書を読んでいたかな、と思ったりする。伊藤さんも今では鬼籍のひとだ。28年前に(ひぃ)『Thirst』を観ていたときには考えなかったことだなあ。このとき既にケストラーは故人で、伊藤さんはまだデビューしていない。ケストラーと伊藤さんが生きていたら、今の世のなかをどう思うかな。

なんて考えると、定番の「Wish You Were Here」にもまた新しい深読みが出来るものです。ピンク・フロイド、ベートーベン、アート・リンゼイ、坂本龍一、キング・クリムゾン、といった引用に、聴けば聴く程そのとおりですとしかいいようのないテキスト。頭の上にもくもくと暗雲が浮かんでくる。しかしそれを瞬時に吹き飛ばし、見える筈のない日差しを見せてくれる幕切れが用意されていました。篠井さんのクリアな笑い声。ライヴの醍醐味というか、生きもののしたたかさを見た思い。いやはや痛快。

終演後珍しく? スズカツさんが長いご挨拶。厳密にクローズドとはいわないけど、こういう公演に好き好んでやってくる(笑)観客への感謝やら何やら。楽しゅうございました、観劇(パフォーマンス?)始めがこの公演とは縁起がいいやね。

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・『機械の中の幽霊』アーサー・ケストラー┃読書メーター
メモ。伊藤計劃の名前、出てくるなあ。これ未読なんで探してみよう

・伊藤計劃:第弐位相┃はてなダイアリー
で、最近も話してたんだけど、はてなダイアリーがもうすぐサービス終了するのですがここどうなるのかねって。自動的にはてなブログに移行するとはなってるけど、当然まんまではないわけで。コメントとかはとんじゃうそうだし。
だいたいのweb(に限らないか)サービスは二十年くらいで寿命がくるというのが見えてきたなあ

・本の街の路地に生きた猫 ひっそり、愛され25年┃Sippo(『猫びより』の特集より)
サラヴァの前にこちらへ。大好きな喫茶店。平日営業なのでなかなか行けないのだけど、時間を見つけては長年通っている。ここじゃないと、というメニューと居心地。マスターとマダムのお人柄も大好き。ミーコさんにもよく和ませてもらいました。ひっそり、という言葉がぴったり。正直「拡散」されないといいな、なんて思うこともあり。でも今回こうして記事になったのは嬉しいな。内容もその辺りを大事にしたもので好感。
スズカツさんいうところの「ラボ」もプリマベーラも、菊地成孔いうところの方舟です。といいつつこういうところにボソッと書いてしまうのがワタシのダメなとこですな

・いやさ、菊地さんがメルマガでこないだ書いてたこととスズカツさんが今回話したことに共通するところがあってね。メルマガの内容はクローズドなものなのでここには書かないし、今回のサラヴァの話もクローズドなものといえる。でもとても楽しい時間だったので、忘れたときのために内容ではなく心情を書き残しておきます(笑)