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2018年05月20日(日)
イキウメ『図書館的人生 VOl.4 襲ってくるもの』

イキウメ『図書館的人生 VOl.4 襲ってくるもの』@東京芸術劇場 シアターイースト

『図書館的人生』シリーズ、今回はこの三本。

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#1『箱詰め男』(2036年)
#2『ミッション』(2006年)
#3『あやつり人形』(2001年)
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アカシックレコードも連想するのですが、人生のライブラリーというだけあって過去上演されたものの変奏曲もありました。『ミッション』は本公演で2012年に上演されたヴァージョンもありますね(このときの演出は小川絵梨子)。タイトルのあとのカッコ内は、その出来事が起こった年。それぞれが少しづつ繋がっている。尻切れトンボに感じるものもあったが、人生ってそういうものだ。ひとの人生のある時間を切りとる、複数の役を演じる役者にも、それを観る観客にもそれぞれの人生がある。短編集、スケッチ、イキウメのカタログとして観ても楽しい。盛隆二の芯のある芝居と、浜田信也のタップがいいアクセント。絵画のようなラストシーン。非常に優れたデザインの作品を観た、という満足感がありました。

カタログというのは演者や脚本、演出の旨味を太っ腹に並べてくれるものでもある。いやはや達者だなあと感心しきり。そして演者はいい声揃い。もともと高音の大窪人衛からハスキーな森下創、倍音テナーの安井順平と舞台で聴くのが気持ちよいのなんのという声質と滑舌を持つ劇団員に加え、客演三人の女優の声がまたよくてね。男優のみの劇団となり、女優を客演で呼ぶというシステムはいい効果を生んでいる。ホンに応じてさまざまな世代の演者を招聘出来る。深い響く声の千葉雅子、鈴を転がすような声の小野ゆり子、瑞々しい張りのある声を持つ清水葉月。理路整然とした台詞の多い前川作品をどう響かせるか、耳心地も考慮しての人選なのだろうか。声というと、引退された岩本幸子さんの声を聴きたいなあ、と今でもときどき思う。

客演といえば田村健太郎もよかったな。やさしくてひとなつこい、常に友人や恋人を気にかけている人物がふとしたことで豹変する。というか、外的要因からそうならざるを得ないところに連れていかれる。人間の善性は環境と状況の奴隷にすぎないというサンプルを、説得力を持って見せてくれた。

数日前、twitterのタイムラインに賞味期限切れのおにぎりを踏めるか、についてのコメントが並んだ。『聖地X』を思い出した。ただの石にしめ縄を巻いたらどんな効果がある? 畏れの在処と根拠を探す。誰(何)を責める/責めないかではなく、そうなってしまう仕組みを探す。それでも責めずには生きていられないひとが存在することへの受け皿も探し続ける。ツールとしての「祈り」、それを必要とするひとがいること。欲求と使命の境界、そこで生じる落とし穴。これらにセーフティネットはあるのだろうか? 研究は続く。

スタッフワークはいつも素晴らしいけど、今回は美術(土岐研一)も音響(青木タクヘイ)も照明(佐藤啓)も冴えまくっていた。朝日が演者にも映り込む、窓枠のシルエットは鳥肌もの。スッキリした女優陣の衣裳(今村あずさ)もよかったな。就職活動クローンの装束には苦笑しつつも納得。かみむら周平の抑制された音楽も心に沁みました。