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2018年02月24日(土)
2000年の大杉漣、と役者仲間たち(廣木隆一ナイト)

ミニコミ用にオフラインで書いていたものに加筆してアップします。そのままだと意味がわからなさそうなところもあるので、解説もちょっとつけました。当時はweb上に画像も載った詳しいレポートがあった。今回探してみたけど見つからない。多分『不貞の季節』の公式サイト内のコーナーだった。こうしたサイトは公開が終わると大概消えてしまう。ファンサイトも同様で、維持出来ないままなくなってしまうものも多い。さびしい。この日記サイトもいつ迄あるかわかりませんが、せっかくテキストがあるのでおいておきます。今見るとすごいメンツ。漣さんと廣木監督の人望あってのイヴェントだった、という記録だけでも残しておきたい。

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『廣木隆一ナイト』@みるく(20000824)

『不貞の季節』プレミア上映パーティー。オールのイヴェントで、終電がなくなる前の第一部でライヴ、その後第二部で映画上映というプログラム。平日だったので映画は諦めて(公開したら観に行くよー)、電車がなくなるギリギリ迄参加。トモロヲさんのライヴを久々に観たい+松重さんが遊びにくるらしいので! との動機で行きました。

フライヤーには「田口トモロヲ(JAGABATA)」のクレジット。新しいバンドでも結成したのかなと思っていたら、なんとJAGATARAのコピーバンド! トモロヲさんのステージネームは江戸トモミ! ライブは二回目(笑)! アケミが逝って今年で十年、写真集やらCD再発やらで静かに活気づいているJAGATARA周辺ですが、あの歌を引き継いでくれるひとがいるのはグッズが揃うよりも何よりも嬉しいことだなとしんみり……の筈がトモロヲさんのアフロヅラ+つけ胸毛+恒例下半身露出にゲラゲラ笑って終わる。かっこええ……(笑)。

さて『不貞の季節』主演! 大杉漣さん率いる大杉漣バンドの登場。’70年代フォークのカヴァーを熱唱です。出てきた途端に若いお嬢さん方のカメラから大量のフラッシュが! 「キャー!」「カッコいいー!」と黄色い声も飛んでビックリ。でも私も実物出てきたとき「か、かっこいい!」思わず口から漏れた…いやホントダンディーで格好いい……。

バンドのベースはBOBAこと田中要次さん。NTTのCM出演時と同じ格好(魚屋さん=ねじりはちまき、ラクダのシャツ)で大ウケ。「春夏秋冬」とか、あとは多分友部正人さんの歌(だったと思う……自信なし)をやってくれました。その後トモロヲさんが再び登場、ハージー・カイテルズで「マイ・ウェイ」を熱唱。キーが合ってないのに堂々と唄い続けるトモロヲさんと、「ねえ、(キー)合ってなくない? 合ってなくない?」とおどおどし乍ら唄う漣さんの温度差が面白かった(その後ジョビジョバの即興歌のネタにされる)。

松重さんは遊びにくるだけかと思っていたら、なんと大杉漣バンドにタンバリンとコーラスで参加。なんだか『ウェアハウス』を思い出してしまいました(相変わらず手首はカタそうだった(笑))。「デカいでーす!(この自己紹介)漣さん主演映画公開おめでとうございまーす! 僕、こんなナリですから外国人の役も多くてですね、漣さんと共演したときはタイ人の役でした〜!」とかいっていた。この夜はザズゥシアターに出演された役者さんもたくさんきていて(佐藤誓さん、田中哲司さん、甲本雅裕さん)、スズカツさんだけがここにいないと気づいたときにはなんだかヘコみました……。

酔っぱらいのムラジュンや柏原収史さん(oasis-T着用)やらの飛び入り、光石研さんによるクレイジー・ケン・バンドのカヴァー、狂乱の会場でメンバーがちりぢりになってしまい全員揃わないうちに出番が終わってしまったジョビジョバ(明水さんは酔っぱらって行方不明、石倉さんはトイレに行っていたそうだ……)等、いや〜濃かった濃かった。終電ギリギリ迄楽しみました。漣さん主演映画公開おめでとう!

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・廣木監督の音楽好きは有名で、映画のサントラも秀逸なものが多く、当時は映画公開のたびにこうしたイヴェントを開催していました。2003年の『「ヴァイブレータ」LIVE & TALK NIGHT!』にも漣さんはご出演、これもとても楽しかった

・本文には書かれてないけれど、大杉漣バンドのギターは大森南朋さん。おーもりさんを初めて認識したのは翌年の『殺し屋1』なので、知らずに観ていたんだなー

・みるくは恵比寿にあったロッククラブ(2007年閉店)。初期DCPRGのホームでもありました。ガウディぽい装飾のちょっと変わった構造で、二階だか三階だかぶち抜きのらせん階段があって、各フロアからステージを観ることが出来たんじゃなかったかな(もはや記憶が曖昧)。そんなつくりなので、ジョビジョバのメンバーは同じ会場にいたにも関わらずちりぢりになったのでした。既に携帯はあった時代だけど電波がすぐ届かなくなる程度のもんだったし、何より皆酔っぱらってたから連絡もつきませんよね(笑)

・そんな時代の携帯+コンパクトカメラで撮影するからフラッシュがすごかったんですね(笑)うーんこうやってふりかえるとテクノロジーの変遷を実感

・てか誰も楽屋にいないくらいステージが見もので、なおかつフロアが楽しかったんだよ。漣さんが主役! と出演を快諾するひと、『不貞の季節』に出演していなくても漣さんと廣木監督を慕って遊びにきたひと、演者と観客の垣根もなくて、ふつーに役者さんたちがフロアうろうろしてて、気軽に声をかけられたし、映画や舞台の話に花を咲かせたり。まさに社交場、クラブの真骨頂。廣木監督のオーガナイズも素晴らしかった

・『ウェアハウス』について。鈴木勝秀=スズカツさんのライフワーク。初期の舞台ヴァージョンに松重さんが出演しています。その何演めかのカーテンコールでちょっとしたセッションがあって、松重さんはタンバリン担当だったのね。そのときエラい手首がカタそうだったのを思い出してのこの感想

・で、スズカツさんどうこうというのは、その頃スズカツさんは舞台の仕事を全くしていなくて、たまにテレビドラマの脚本仕事で名前を見る程度だったのですね……

・ちなみにみるくのクリエイティヴディレクターの方は今こんなお店を開いています。今度行ってみたい
-『「クラブシーンの仕掛け人」が切り盛りする“朝食専門店”の謎』各駅停車パンの旅 渋谷編│文春オンライン

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数えきれないくらい多くの役を演じ、多くの役者たちに大きな背中を見せてくれた。多くの監督たちに愛された。そして多くの観客が愛した“現場者”、大杉漣。まだ信じられない。今はただ、のこされた作品をふりかえるばかり。