初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2018年01月24日(水)
Tera Melos / LITE Japan Tour 2018

Tera Melos / LITE Japan Tour 2018@TSUTAYA O-WEST

ツアー前半はLITEとまわります。初日の今日はNENGUも参加。NENGUは重戦車、LITEはブルーインパルス、Tera Melosは深海をビュンビュン泳ぐ蛸のようであった。

NENGUは初見。トリオ編成、下手側にセッティングされたDrsに対し、上手側からBとGが迎え撃つかたち。よってフロアを向きません(笑)。強烈なブラストビートにBとGがガンガン乗っかっていく。Gの子が細身のアダム・ドライバーみたいな風貌で、イタコのようになって弾いてます。こーれーがー格好いい! スピードがあるのに重みもある、ブラストやるならこんぐらい叩いてほしい! と胸躍る。このときは後ろにいたのでセッティングが見えなかったんだけどサンプラーも使ってたのかな、Gが実に多彩な音を出してくる。そのうえリズムが立っており、ブレイクの抜きがあまりにも自在なので、同じBPM(だと思われる)のに車のドリフティングのようにスピードが切り替わるので真剣に聴くと酔う(笑)。音でのなぎ倒しっぷりが素晴らしく、演奏のあとはステージ焼け野原、ぺんぺん草も生えませんよってな勢いです。

MCはBの子。Tera MelosもLITEも学生の頃から聴いてたんで〜とかいいだしてヒィとなる。この界隈はフォロワー間の風通しがいいなあ。最後に誰でも知ってるあの曲をやります、と始めたがリズムの脱臼っぷりがすごくて全くわからん、やがてゲーム音楽のような脱力ピコピコ音から浮かびあがったのはなんと「威風堂々」のメロディでした。笑いとともに歓声があがる、いやーこの攻撃性溢れるユーモア! お見事でした。

二番手LITE、転換時に前に入れて以降は上手側二列目で観る。全体的にこの日は音がデカく、スピーカー前にいたもんで途中迄中音がとれず四苦八苦。Drsがあんまり聴こえなかったのね…せっかくこの日山本さんの36歳のお誕生日だったというのに残念なことであった。でも途中からは聴こえるようになってホッとした〜。というわけで突然祝われた山本さん、楠本さんにマイクを所望しアニメ声で挨拶しておりました、かわゆ〜。てか先日の『HINA-MATSURI』のときのフォローといい楠本さんはいいお兄さんだねえ。実際誰がいちばん歳上かは知らないが。

短期間でのライヴが続くのでセットリストも全部変えるとのことで(よくやってるけどなにげにすごいよね)、「Ghost Dance」「Warp」とビシビシキメる。井澤さん(下記instagram参照)曰く「ソリッドに攻めた」。シンクロし疾走するリフがあるきっかけで和声になり、そして一糸乱れぬリズムで進む。軌跡を残して音が分かれ、やがてまた同じ軌道へ戻ってくる。まさにブルーインパルス、一歩間違えば大事故だがLITEは事故は起こさない、と信じてしまいそうになる。実際トラブルが起こってもカヴァーできるスキル、度胸、そして鉄壁のアンサンブルを持っている。鉄板「Bond」では大歓声、ラスト「Phantasia」は一心不乱に高みへ昇っていく轟音カッティングと高速リフで大団円。親和性のあるメンツ揃いのこともあって観客の反応もとてもよかった。


や〜いい写真!

さてTera Melos! 八年程前にマイク・ワットがらみで知ったんだけどライヴを観たのは初めて。当時はこのアー写のイメージが強く、ノイバウテンの『半分人間』のアートワークを思い出す…だいたいの本数が決まっているイメージの指とか歯をズラ〜ッと並べられたときの気持ち悪さな……などと思っていたら音は全然違っていたのだった。それこそマイク・ワットやLITEが招聘していたAdebisi Shank(大好きだった〜!)ばりの変態(敢えてこういう)マスロック。そして実際ライヴを観て、改めてその思いを強くする。twitterでどなたかが「バカかっこいい」と書いていて膝をバンバン叩いたわ。ヒーと笑い、ヒーと戦慄するの繰り返し。

目の前だったニック(G)のセッティングからもう釘づけ、カスタマイズつーか手づくり感満載だ。配線本人しか出来ないんじゃないか……実際本人がやっていたが。カラフルなかわいらしいポーチから出てくる出てくる大量のケーブル。従来のエフェクターをセットした駅弁箱くらいのボードを右に、ペダルじゃなくて2×3×2cmくらいのスイッチ(ライト仕込んであって全部光る)を8つくらい並べたボードを左に。スイッチとアンプの間にRoland SP-404かませてた、他にも2〜3個なんか介してた。それらのちいさなスイッチをフレーズごと、いや、もはや一小節ごとといってもいいくらいの頻度で踏み替えて、繋いだ一台のギターからやたらめったらな音をビュンビュンとばしてくる。そのギター本体はというと左利き用のもので、それに右利き用に弦を張って右で弾いている。なんだそれ、わけわからん。こいつぁすげえギークっぷり。ちなみにニック、結構な大柄でギターがおもちゃみたいにちっちゃく見えました(あとで調べたらこのギター、Super-Sonicというもので従来のギターより確かにちょっと小さめではあるらしい)。足も大きいわけで、ちょっと位置ズレたらあんなちいさなスイッチ2〜3個いっしょに踏んじゃいそうなとこ、身軽にピョコピョコ踏んでたなあ。

そんなこんなでエフェクターを踊るように踏み踏み、左手は素早いパッセージ、右手は細やかなリフを刻み続け、なおかつ近年は歌ありの曲も多い。弾いてないときもエアギターかエアテルミンか、手から念出して音よ出ろってな挙動がもうおかしい。顔は真顔。とにかくやることが多すぎてオーディエンスにかまってる暇などない様子なんだけど、スイッチングや演奏がバシッとキマったときにパァア…と花が咲いたように笑顔になるのでそれを観たフロアが総じてニコニコになるよい光景。

ネイサン(B)の機材も相当あったようだけど見えなかった。ジョン(Drs)の機材はコンパクトで、細身の彼はテクニカルなリズムを軽やかに、しかしブラストとなるとグラインドコアもかくやの速射砲、そして正確。とにかくふたりともニックとの阿吽の呼吸がすごい。カウントもアイコンタクトもなしでなんでこうも息が合うのか。それでいて全員が思い思いに演奏しているように見える。バンドアンサンブルもここ迄くるともう笑える。そう、バカかっこいい!

演奏では集中している分、終盤のMCでニックはべらべらしゃべる、マイク通さないでしゃべる、日本語と英語で日本愛とLITE愛とNENGU愛とマリオブラザーズ愛を語り、挙動はずっとおかしい。ジュン! コーゾー! とフロアで観ていた井澤さんと楠本さんに呼びかけ、愛溢れる言葉を連発。そしてアンコールでビシィ! とフロアを指差し、「Two more, for you!」といったのにはシビれた。ギークっぷりとのギャップがすごい。ちなみに彼、セッティングしているときは寒かったのかニット帽とフーディー着用だったのですが、それをステージ上で脱いでアンプの後ろにいそいそ置いて、PAにサムズアップで「OK!」と合図を出しておもむろに演奏をはじめたところにもニッコリした。演奏後はニット帽だけきっちり被ってフーディーは置いていって、物販エリアでファンたちに囲まれておりました。これもよい光景。

ポストロックの範疇は広いもので、そのなかでもインスト、マスロックの可能性はいくらでもあるなあと思わされる。アイディアとスキル、そしてDIY。バイタリティに満ちたバンドを一夜でこれだけ観られて幸せです。Tera Melosはこれから結構細かくツアーまわっていくので、あなたの住む街に来たら是非。

そういえばTera Melos、LITEのアンプ(構造さんと武田さんの。井澤さんのもだったか?)そのまま使ってたけどツアー後半はどうするんだろ。