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2017年03月04日(土)
『アシュラ』

『アシュラ』@新宿武蔵野館 1

2016年、キム・ソンス監督作品。原題『아수라(阿修羅)』、英題『ASURA:The City of Madness』。

書いているのは3/14。3/4の初日初回に観て(満席御礼〜)、一週間後にもう一度観てきました。なんだ最高か、私も市長からみかんもらいたい〜! 金属バットや牛刀で見慣れてる韓国ノワールの殺し合いに警察が絡むと銃も存分に使えてこれまた最高かはっはっは! 底が見えない悪徳市長(ファン・ジョンミン)、その犬として働く刑事(チョン・ウソン)、市長に支配されていく後輩刑事(チュ・ジフン)、市長の不正を暴くためには手段を選ばない検事(クァク・ドウォン)と捜査官(チョン・マンシク)。架空の街アンナム市でくりひろげられる潰しあい。

きっかけは死の床にある妻の治療費を稼ぐため。脅迫や隠蔽といった汚れ仕事は自分の身を日々がんじがらめにしていく。市長と検事、どちらにも従いどちらをも欺く。「俺は勝つ方につくだけ」、しかし枷は増える一方。いつのまにか妻をも裏切っている。こんな板挟みつらすぎるわ…という思いがピークになったとき、刑事はふたりに言い放つ。「ふたりで話し合ってください、板挟みにはもう耐えられません」。

初日初回、このシーンでドッと笑いが起きました。笑わずにはいられない程のどんづまり。他にも笑えるシーンは沢山あって、市長があまりにも悪すぎて笑ってしまう、刑事がいきあたりばったりすぎて笑ってしまう。不正が白日のもとに晒されることはない。それなら自分ひとりで破滅するものか、おまえも道連れだ。もはやヤケのやんぱちです。今の韓国だからこそ生まれた作品のように感じました。二年前に公開された『ベテラン』のような、胸のすくような希望は全くない。どちらにもファン・ジョンミンが出演しており、正義の刑事と悪徳にまみれた市長を演じているところも象徴的です。「国民的俳優」は市井のひとびとの思いを代弁する。

全てはこれのためだったか! と思える最後の40分、葬儀場のシーンが素晴らしい。血で血を洗うとはこのこと。殴り、蹴り、刺し、撃つ。積み重なる死体、血液と体液で滑る床の風景。振り返ってみれば台詞のないシーンほど印象に残っている。傷だらけの二枚目チョン・ウソンの顔、思慕と憎悪がないまぜになったチュ・ジフンの泣き顔(これは強烈に印象に残った!)、不気味としかいいようのないファン・ジョンミンの笑顔。ふてぶてしい番犬から従順な仔犬へと変化するクァク・ドウォンの目。ものいわぬ役者の表情、物語る背中、空撮で見下ろす夜の市街。雄弁な映像の数々。カーチェイスのシーンはどうやって撮ったんだ?! と衝撃。

展開としては「どんどん悪くするぞ」「最悪の展開にするぞ」という狙いが先走っているようにも感じ、そのため間延びするように感じられるところもある。いろいろと歪なつくりではあるのですが、一度虜になったら逃れられませんね。最後の方になると悪夢というかもはやファンタジーめいてくるところも好き。この修羅場はいつ迄続くんだ、誰も通報しないのかとか…こわすぎるから封鎖して全滅する迄ほっとこうって感じだったのかしらとか……隣で葬式してたひとたちとばっちりで気の毒すぎる、あのガラガラおしてたひともねえ。どうなったのかしらねえ。巻きぞえ喰らってないといい、全ては夢のなかだといい。でも夢じゃないんだね。いやー、たまらん。

話が前後しますが、ジョンミンさんとドウォンさんは『哭声 コクソン』でも共演しており、もうなんとも…同じひととは思えない……役者ってほんとすごい……と思うばかりです。

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なんともまとまりませんが以下小ネタを。

・ソンモ(チュ・ジフン)が前髪あげてスーツになってからネモジュンに見えてしょうがなく、ネモジュンもうやめて! とか思っていた。ソンモはいい役だよねー、おいしいともいえる。でもそれをより魅力的にしたのはジフンさんの力。カジュアルでラフ、坊ちゃん髪型の刑事からの変化がほんとあひるが白鳥になったようでしたよ

・市長の背景が全く描かれないのがまた怖い。で、そんな市長に二十年ずっと仕えてたっていう室長なんなの。市長にパンツ履かせてあげたりキャッて腕にしがみついたり。ひとにさわられるのが嫌い(そんな描写がある)な市長が無防備にされるがままですよ。なんなの

・役同様ジョンミンさんも暗躍していた。いや、暗躍ではなく…なんていうんだろう、前述したように市長の背景って全く描かれないんですよ。それなのに説得力があるという……ただただ上に立ちたい、ただただ儲けたい、ただただひとを跪かせたい。底なしを通りこして空虚すら感じさせる市長像。脚本の隙をこう表現するか! とただただ感服
・あの場面でサムズアップで「グッド!」とかさ〜、おっそろしいよ

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・輝国山人の韓国映画 アシュラ
室長がキム・ジョンスというひとだとわかって有難い〜。室長、しあわせになって!(無理)(いや役だから)

・映画『アシュラ』NG映像 “2つの顔の悪党たち”【公式】


・映画『アシュラ』キャラクター映像【公式】


本編観てから観ると笑える。所謂K-POPもそうですが、韓国のエンタメ業界は動画を効果的に使った宣伝展開が常識で、こうしたメイキングや広告が大量に公開されています。それらに字幕をつけ、改めて日本向けに配信してくれる配給会社の丁寧な仕事ぶりがとても好印象。公式さん(@CJEJmarketing)有難う、こういうのを待ってました!

・実は宣伝展開はじめた当初はなんじゃこりゃって感じだったんだよね…野獣男(ヤジュメン)とか家庭円満ステッカーとか。途中から方針を変えたように感じました。ファンの反応を見て、要望を汲んでくれたのだとしたら有難いことです

・韓国人監督はなぜ俳優にガラスのコップを食べさせたのか −映画「アシュラ」キム・ソンス監督が語る権力|BuzzFeed
「常套手段の銃撃戦を変えてみたいと」って言ってるけど銃も存分に使ってますよ。韓国ノワールの殺し合いの定番は刃物と鈍器だと知ったのは『新しき世界』でした。兵役があるので素人でも操作方法を知っているため、銃規制が厳しいそうです。今作では警察が銃を悪事に使っているのでもうどうしようもない(笑)

・twitterのハッシュタグ「#アシュラ小ネタ」がおすすめ。撮影裏話や出演者、字幕翻訳について等、アシュラトリビアがいっぱいです。「棒切れ」にはそういう意味があったのね
・あとジョンミンさんファンとしては「#本当は怖くないファン・ジョンミン」もおすすめです(笑)

そこで知ったもので特に興味深かったもの、例のカーチェイスシーンについて。

・영화 '아수라' 비하인드 - 카체이싱 장면 제작 영상 (映画『アシュラ』ビハインド カーチェイスシーン制作映像)


・くらっとする雨の中の追跡、群がってくるゾンビの群れ CGが主人公
excite日本語訳