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2017年02月18日(土)
『足跡姫〜時代錯誤冬幽霊〜』

NODA・MAP『足跡姫〜時代錯誤冬幽霊〜』@東京芸術劇場 プレイハウス

言葉の劇作家。しかし視覚的な演出家でもある。

言葉で表現しえないものが舞台に載る。ト書きにも記されていないかもしれない光景が舞台に載っている。満開の櫻、闇にぽっかりと空いた穴。観客の記憶を呼び起こすそれらは、劇作家/演出家の記憶でもあり、その舞台にかつて立った役者の記憶へと結びつく。「向こう側」は、どこでもなくてここにある。

おまえの身体だけがほしいといい続ける人物。肉体の芸術はやがて朽ちる,そのことへの怒りと無念と執着。舞台で生きるひとたちは、舞台上で何度も死ぬ。偽物の死は何度でも演じられる。それも肉体あってこそ。死者の代行としての使命を作家は書き、演出家は光景を描く。今生きている役者たちはその言葉と光景に、まっすぐ向きあう。それは今ここにしかないものになる。

かつて「化けて出てこい」という名台詞を書いた野田さんが、ここまで言葉にしきれない混乱した思いを舞台にのせるとは。「化けて出てこい」に替わる言葉がまだ見つからないのだろうか、とも思ったが、「代行」の決意のまえにそんな邪推は霞む。

ご本人はまず初日を開けて、作品の評判をとらないと、と仰っていたが……観客は何をすればいいのだろう。観る側の肉体もいつかはなくなる。「観る側の代行」は、各々が探していくしかない。とはいえ、これは時間がいる。サさんと「再演を重ねていけばクリアになってくるのかも」と話したが、この剥き身な思いは今しか出てこないものかもしれない。そして、これをいつ迄「まだ受けとめきれない」と言っていいものか。

サウンドデザインの原摩利彦、音響のzAk。初参加となる音づくりのチームが異彩を放っており、NODA・MAPでこの手の音が聴けるとは、と新鮮でもあった。