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2017年02月15日(水)
『虐殺器官』

『虐殺器官』@TOHOシネマズ新宿 スクリーン5

伊藤計劃による原作が書かれてからもう十年経つのか……という感慨もありますが、無事この作品が完成したことにもホッとしたというか。というのも、制作会社が経営破綻して一度頓挫していたのです。エンドロールに「引き継いでくれたジェノスタジオと、サポートしてくれた皆さんのおかげで完成しましたありがとう」みたいな挨拶が流れてきて、よかったねええとしみじみしました。

非常によくまとまっており(クラヴィス・シェパードの人物背景等はかなり思い切って省略してる)、ヴァイオレンス描写も直球。兵士がこどもを殺戮していくシーンがゲームっぽく見えてくる。それは感情をマスキングした兵士の感覚そのもの。ここと、痛覚のマスキングのくだりは絶対に観たいところであり、期待も大きかったところ。心のなかでガッツポーズ。つらい。

そしてこの作品の重要な位置を占めるのは、ヴァイオレンス描写と対をなすようなシェパード(中村悠一)とジョン・ポール(櫻井孝宏)の対話。舞台劇を観ているかのような明晰なやりとり、見事でした。聴けば聴く程「そのとおり」としか返せない。滅入る。目で読んでいた原作、目で見る絵。しかしこの作品の「言葉」を耳から聴けたことの感動がいちばん大きかったかもしれない。先日テレビで『ハーモニー』も観たのだが、ミャハが「みやは」と発音されていたのがどうしても気になってしまったことからも、伊藤計劃の書く言葉は理路整然としているのに感覚に訴える力が強いのだなと思った。

欲をいえばリーランドの最期の場面はもうちょっとじっくり観たかったかな。そしてこうなると実写も観たくなってくる。パク・チャヌクによる実写化の噂もあるそうなので、密かに楽しみにしています。

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・Project Itoh
公式サイト。伊藤計劃が遺した『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』全てをアニメ化するというプロジェクトでした。全て完成して本当によかった……

・パブ「虐殺器官」2月10日オープン!|ハヤカワ・オンライン


公開記念でこんなものも。ジョン・ポール・ピザとかなかなかキツいシャレ(笑)。しかしたべもの描写が妙においしそうだったんだよね。シェパードとウィリアムズが食べてたピザ食べたい

・マングローブ破産から『虐殺器官』の復活劇を山本幸治Pが語る! | アニメイトタイムズ
「(倒産時)完成度でいうと2割しか作れてなかった」。修正作業もかなり多かったとのこと。
そういえばアニメ化が決まったころ書籍のカバーもアニメのものになったんだけど、その絵にはちょっと違和感あったんです。髪型とか、随分幼いシェパードになったなと思って。本編ではそのあたりスッキリしてたんですが、シーンによってキャラクターの顔立ちがバラついてるように感じたところもあって。このあたり、制作中断と関係あるのかな

・虐殺器官 無事劇場アニメ化よかったね ネタバレと思しき部分アリ| コンシューマゲームが死んだら俺も死ぬ
「『虐殺器官好き』に特化した映画」。お、おう