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2016年10月15日(土)
『あたま山心中〜散ル、散ル、満チル〜』

近藤公園・平岩紙 二人芝居『あたま山心中〜散ル、散ル、満チル〜』@下北沢 駅前劇場

竹内銃一郎作品を観るのはcurate246-T『かごの鳥』以来。西牟田恵と池田有希子のふたり芝居だった。今回もふたり芝居。そして出てくる鳥のかご。今作は落語『あたま山』とメーテルリンク『青い鳥』が主なモチーフになったもので、初演のキャストは串田和美と吉田日出子とのこと。

同じ劇団の近藤さんと平岩さんがこれだけガッツリ向き合う作品を観るのは初めて。それだけでもドキドキしたものですが、ふたりが演じる危うい関係がこれまたスリリング。兄妹、母子、恋人、夫婦。そしてラストシーンのあっ、と思わせられる間柄を瞬時に演じかえ、直球の愛と死を変化球な構成で演じる。出かけるのはどこ? 探しているのは何? お互いをいたわり、同時に傷付けあい、抱きしめあうふたりの愛らしく、官能的なこと。

鬼気迫る平岩さん、というのは予想そして期待していたもので、実際それが観られたことはたまらない嬉しさだったが、近藤さんの狂気がこれまた素晴らしかった。ちょっとお、鈴木勝秀演出作品に出てみませんか? と言いたくなったわよ(笑)。髪型のせいかとても幼く見える瞬間もあり、兄を演じる場面は少年のよう。一転、妻に責められ苦しむ夫の姿は一気に老け込み、『死の棘』を連想させる。『ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン』ではこんなに踊れるひとだったんだ! と驚かされたものだが、今年は近藤さんの新しい魅力に気付かされる機会に恵まれた。思えば蜷川演出作品をはじめ、外部公演から呼ばれるのも早かったものね。

そうすると平岩さんの演じる島尾ミホを観てみたくもなる。怒りとともに紅がさす頰が白い肌に映える。うわー今度はこのふたりで『死の棘』やってみませんか。今後の予定は未定とのことだが、続いてほしい企画です。

演出は寺十吾。思ったのはやはり舞台は演出家のものだなあということで、音楽や照明の過多をどう受けとるかは好みかな。個々の楽曲(坂本弘道)、照明(佐藤啓)の強さや色味はとても魅力的だったので、個人的にはそれらの起用のタイミングと回数が気になった。もっと、台詞をはじめとする演者ふたりのやりとりをじっくり観たかったという思いが残った。うーん、同じ演者、違う演出で観てみたい……。

駅前劇場の舞台をはみださんばかり、客席に侵食してくるように枝を伸ばした桜の大木の美しさ(美術:杉山至)。ひとりの女の頭に根付く桜をして、その女に「桜の樹の下には屍体が埋まっているなんて失礼しちゃう」なんて言わせる。そのとき女は生きているのか死んでいるのか、その行方を男と追う心地よさもあった。

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・近藤公園・平岩紙二人芝居『あたま山心中』〜散ル、散ル、満チル〜|オフィシャルサイト
当日パンフレットがなかったので終演後スタッフクレジット探してあたふたした。このサイトのいちばん下にちっちゃ〜く載ってます

・近藤公園と平岩紙が初めての二人芝居に挑戦中!『あたま山心中〜散ル、散ル、満チル〜』 | 【es】エンタメステーション
近藤さんほんと少年みたいだったよね。白いシャツがまたお似合いで

・「あたま山心中」の思い出│竹内銃一郎のキノG語録
「久しぶりに読んだこの『あたま山心中』、相当に面白い」。ははは。今回の上演にあたり改訂を加えたことや、吉田さんたちとの思い出話が綴られています。ジュリエッタ・マシーナがモデルだったのだなあ。
モチーフには前述したものの他、深沢七郎の『楢山節考』などもあるとのこと。ああ、確かに姥捨の話でもあるなあ……

・(みちのものがたり)フェリーニの「道」 イタリア 妻のために書いた道化師役:朝日新聞デジタル
で、おまけ。観劇したその日に新聞に載っていて驚いた。『道』のジュリエッタのかわいらしさ、ものがなしさ……いつ迄も心に残る。あっ、そうなると近藤ザンパノと平岩ジェルソミーナで『道』もいいね。近藤さん身体鍛えて!(笑)