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2016年03月30日(水)
矢野顕子 40th Anniversary『ふたりでジャンボリー』

矢野顕子 40th Anniversary『ふたりでジャンボリー』@東京グローブ座

motk10周年、JOA20周年、高橋徹也20周年ときて、矢野顕子40周年〜。尊敬。ソロデビュー40周年記念企画第一弾とのこと。ピアノ弾き語り公演に、日替わりゲストを招きます。清水ミチコさんとのゆうべに行ってきました。ステージ上には向かい合わせのグランドピアノが二台。上手側にギターとアンプ、スタンドマイクがあったのでもうひとりゲストがいるのかな? と思う。

オープニングからふるってた、まず出てきたのは清水ミッちゃん。衣装も雰囲気も似せているので、一瞬わっと拍手がわいたあと、あ、あれ? やのさんじゃなかった! とどよどよとした笑いが起こります。そのまま弾き語りで一曲、「丘を越えて」。わかっちゃいるけど似ている。笑いと拍手が波のように続きます。にっこり笑ってやのさんと入れ違いに退場、残ったやのさん、ひとこと「もうっ!」。ウケるウケる。やのさん、山吹色のドレスがとても素敵。長い腕と脚が映える。

実は風邪をひいてしまい…プロとしてあるまじきことでかたじけない……しかも花粉症だったらしいの、今回医者に行って初めて知ったのよ。だってNYでスギとかヒノキとか、わからないじゃない! そんな訳で、今出る音域を考えて、曲を厳選(ここ力入ってた)しましたのでね。一本二万円の点滴も打ってきましたし、精一杯務めさせていただきますよ。にっこり。確かにしゃべる声は嗄れ気味でうわあつらそう、と思ったのだけどそこは40年選手のザ・プロフェッショナル。いやいや聴かせてくれました。今聴く「すばらしい日々」はしみた。いつもしみるが。いやもう泣いた泣いた。

まあなんというか、この歳になるとこの歌詞のとおり「暗い話にばかり やたら詳しくなったもんだ」。……それにしてもこの曲を書いた奥田民生の年齢を考えると、その達観ぶりに敬服する。唄い終えたやのさん、「この曲はユニコーンが解散を決めた頃に奥田民生が書いたものですが……そのユニコーンも、今では何もなかったように再結成してますからねっ」「やっぱりね、つらいことって本当にあるけど、変わっていくものなんです。そんな深刻にならないでいきましょう」。いやもう頷いた頷いた。

やのさんもいろんなひとを見送ってきた訳で、そういうこともあってか、今回は死にまつわる話が沢山あった。NHK『ファミリーヒストリー』に出ることになって、というトピックからご両親のことに。余命を宣告されてから一切の治療を断り、自ら遺影を選び(「しかもそれ40代のときのなのよ、ずうずうしい」。それを受けてミッちゃん「し、偲びにくい!」。大ウケ)墓や葬式の手配もし、その葬式の手伝いにやってくる近所の方々が食べる仕出し弁当の選定も済ませていかれたという、お母さまの剛毅な話がすごかった……み、みならいたい。墓もウチは士族(白虎隊のルーツなんですって)の立派な墓があるんでこっちに入ります! と言いだして、お父さまがえええ……となったとか。それはなんとか回避して、お父さまも亡くなった今では同じお墓に「(お骨の)配置に気を配りつつ」入っているそうです。個人的に、今こういう話を笑い乍ら聴けたのはよかった。ハイバイ岩井さんじゃないけど、こういう話いっぱい聴きたいんだよね。不幸は間違いなく誰にでも訪れるもので、だけどなかなか他の家がどうなのかはわからない。笑えることもある筈で、むしろ笑いたい訳で。そして時間が経てば笑える訳で。

そんなこんなでハラカミくんの話題も出て、キヨシローもミッちゃんのモノマネによりステージに降臨、ミッちゃんの弟さんである清水イチロウさんによる細野さんもやってきて(いや細野さんはご健在ですが!)この世とあの世が入り乱れ。ステージ上に何人いるやら。それにしても清水家どういう姉弟……お姉ちゃんがやのさん界隈を聴かせまくって「洗脳」し、ふたりでモノマネセッションを繰り広げていたそうです。今では本家と同じステージで堂々としたわたりあい。萎縮するなんてむしろプロとしてあるまじき行為ですものね。「数あるゲストのなかからこんなねえ、演芸の日を選んで頂いて有難うございます」と言っていたけど、いやもうホント、やのさんの言うとおり「アート」ですから、これ! どんなに悲しいことやつらいことがあっても、『趣味の演芸』の「感極まってピッチがおてんばになる黒木瞳」を聴けば全てがどうでもよくなる、元気になりますよ、とやのさん。笑いってだいじなものだよね。圧巻のモノマネを繰り広げるミッちゃん、ピアノを弾くときは真顔であった。そしてイチロウさんへのふるまいは姉であった。いくつになってもきょうだいはきょうだい、見てて楽しいやりとり。

今週頭に、横町慶子さんの訃報が伝えられた。先月写真展を観に行ったばかり。次作を心待ちにしていた。ご本人も再演に意欲を燃やしていたし、舞台に立ち続けることを強く望んでいた。果敢にいろんな公演を観にいらしていて、バリアフリーが整っていないスペースでもよくお見かけした。復帰してからはちいさなスペースでの公演が主だったため、離れていったひとも多かったのかもしれない。観客のレスポンスを欲しておられたのだと思う。私が書いたものに迄、わざわざメッセージをくださった。無念でならない。矢野さんも細野さんも、横町さんと縁のある方だ。細野さんはモノマネだけど。横町さんもここにいればいいのに、と思った。

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セットリスト
参照画像。有難うございます)

01. 丘を越えて(清水ミチコの矢野顕子)
02. ふりむけばカエル
03. そりゃムリだ
04. すばらしい日々
05. ほめられた
---(以下カッコ内はミッちゃんが真似した人物)
06. 相合傘(矢野顕子。つまりふたりアッコちゃん)
07. モスラのうた(ザ・ピーナッツのどっちだったんだろう)
08. 恋のフーガ/老人と子供のポルカ(左卜全)
(ここで「ゆーないとデザインのてぬぐいのうた」。「清水ミチコがゲストの回だけ何故かやたらてぬぐいが売れたと言われたい」とのことで・笑)
09. 風のブランコ(森山良子)
10. 恋は桃色(w/清水イチロウの細野晴臣)
11. Lover, Come Back To Me(綾戸智絵、瀬戸内寂聴、ユーミン…五十音順で何人いたか? 圧巻ものまねメドレー)
encore
12. ひとつだけ(忌野清志郎)
13. 夏は来ぬ(やのさん、リクエストを募ったあと「インストで!」と即興ピアノソロ)

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