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2016年03月27日(日) ■ |
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高橋徹也『The Orchestra』 |
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高橋徹也 20th ANNIVERSARY 弦楽ライヴ『The Orchestra』@下北沢SEED SHIP
Vo, G:高橋徹也、Arr, Pf:佐藤友亮(sugarbeans)、Vn:矢野小百合、Vla:田中詩織、Vc:今井香織。
三年前からシリーズとなっている(三回目(2015)、二回目(2014)、一回目(2013))弦楽ライヴの四回目。天の利、地の利、人の和揃った感がありました。ひとつの完成形を見た思い。楽曲の素晴らしさ、アレンジの妙、歌唱・演奏のコンディション、音響のよさ、観客の集中度、そしてハコの外からの影響がなかったこと。 神がかっていた……音楽に奇跡が宿る瞬間に立ち会えた、その幸運に感謝したい。心からそう思えたライヴだった。
それぞれの要素についてもうちょっと詳しく。佐藤友亮によるストリングスアレンジが回を重ねるごとに磨かれ、決定版と言えるものになっている。そのアレンジにより、楽曲そのものの新しい魅力に気付かされるのは毎回のことだが、同時に原曲の持つ多面性にも恐れ入る。そして音響のバランスがとにかくよかった。演奏用のスペースではあるものの、観客がランダムに位置するフロアで、自分のいた位置はチェロの斜め前二列目。楽器にはマイクが装着してあるが、生音もダブって聴こえるくらいの距離だ。ところがオープニングのチューニングがインプロへと変容し、そのまま「美しい人」の導入へと繋がった(この構成も見事だった!)ときには、全ての音がハーモニーとなってスピーカーから現れ、そのハーモニーがハコを響かせる、といった形で耳に届いた。いや、頭上から降ってきた、といってもいい。えーとこの説明でわかるか? どう書けばいいんだ? スペースそのものが楽器になったかのようだった。
音響のよさを実感するのは、大概音の分離のよさなのだが(個人の判断です)、今回はもう各々のパートが、と言う域ではなく“The Orchestra”の音としてしか聴こえなかった。どの音も等価。どの音も欠かせない。まさにそれがオーケストラなのだ。前回も似たような位置から聴いていたのだが、こんな鳴り方はしていなかった。同じ場所での演奏を重ねることで、プレイヤーだけでなく音響スタッフにもノウハウが蓄積され、コントロールが自在になったのだろう。数回ハウリングがあったけど、これはプレイヤーが動くことによって起きる不可抗力。
この響きはどこから生まれる? 耳を澄ます。この非日常の正体はどこにある? 目をこらす。そうしていると歌詞の世界が眼前に現れる。白眉は「海流の沸点」。“どちらから?”、“安い洗浄液”。高橋徹也そのひとしか持ちえない声で唄われるこれらのラインで、ライヴスペースがぐにゃりと歪んだような錯覚に陥る。夜の“古いサービスエリア”の風景に放り込まれたかのよう。文字通り鳥肌がたった。すごい、と思う前にこわい、と思った。くわばらくわばらと唱えそうになりましたよね…いや、演奏のすごみのことを言いたいんだが、実際この歌のストーリーにとりこまれたらエラい目に遭いそうな気がしたんだ。だってトワイライトゾーンみたいじゃないの…うっかりその角を曲がったら、恐ろしい世界が待っていそうじゃないの……。バックミラー越しに後部座席を見ると、ほら。キエーーーーー
とりみだしました。いや、それ程すごかったと言いたい(伝わるのか)。「Praha」もすごかったな……演奏を通し、その作品の世界を浮かび上がらせるその力量。音楽は水面に絵を描くようなもので、そのすがたかたちを捉えることは叶わない。しかし、その世界を共有する場をつくることは出来るのだ。あとなんだ、えらそうですが高橋さんの歌の表現力、安定感がいつにも増して素晴らしかった。ピッチといい声の伸びといい……歌は身体の楽器で、体調や鍛錬によっていくらでも変化するものなのだ、と強く思い知らされる。相互作用もあっただろう、いい環境、いい演奏を前にすることで観客側の感覚も研ぎ澄まされる。この空間、この時間を壊さないように、たいせつなものにしよう、という意識が(無意識であっても)働いていたように思う。
いやね…先日劇場での携帯の扱いについて話題になりいろいろ思うところがあったので。ステージに立つ側がどんなに気を配っても、観客側の不注意で全てがだいなしになることは決して少なくない。その日そのとき、その空間でしか表せない世界をつくりあげるために日々準備するアーティストへの敬意があれば、それを阻害する原因になるものなど持ち込める筈がないのだ。電源を切る必要はないと言う主張には絶対に頷けないと今回改めて思った。終演後「あのときもし携帯が鳴っていたら……」とふと考えてゾッとしましたよ。携帯だけには限らない。ステージに立つ側、それを観る、聴く側両方の協力によって生まれる奇跡と言うものはある。
それを後押しするかのように、外部からの騒音が一切なかった。茶沢通りに面しているので、大きな音をたてて走る車や救急車のサイレン等の音に水を差されることが過去何度かあった。しかしこの日はそれがなかった。SEED SHIPにいるひとたちの思いが通じたかのようでした。こんな幸運はそうそうない。演奏する側も手応えがあったのではないだろうか、こうなるともう自由自在だ。「ブラックバード」のグルーヴ(中盤のスローダウン!)、「大統領夫人と棺」のテンション、「別れの朝 歓びの詩」の名残惜しさ。繰り返すが、奇跡のような時間だった。
「このとき、この場所でしか聴けない」ことはとても贅沢。居合わせたことに感謝したが、同時にこれだけ素晴らしい作品は広く知られ、聴かれてほしいとも思う。もうホント、このシリーズの音源を出してほしい。高橋さんの何度目かの代表作になるようにも思います。20周年おめでとうございます! やー、この一週間は20周年づいてました。
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その他。
・メンバー紹介で矢野さんの苗字を間違える。演奏や歌にのめりこんで集中してると回路が混線することありますよね!(とフォロー) ・すっごい気にしていた。「香織さん、詩織さん、小百合さんって語感が似てるって言いたかったんだけど(まざってしまったらしい)」「これは許されない」「罪は消えない」「今夜眠れないかも」「ひとの名前を間違えるなんて……自分が高橋って結構ある苗字で、学校とかで『高橋(テ)』とか書かれるのがすごくいやだったのに。なんだよ(テ)って! 人権侵害だと思っていたくらいだったのに」「でもウチの母親が兄貴のものと区別するためパンツにまるて(㋢)って書くのはすごく好きでした(笑)」
・「大統領夫人と棺」で盛り上がったあと「やー、やっぱロック向いてるわ」 ・ライヴ前近所を散歩して気持ちよかったって話。「柴犬のおっきいやつを二匹つれてるひとがいて……」秋田犬のことかな…… ・ノンアルコール・ビールに凝ってる話。これでつまみ食える。「ビール、いるかな?」 ・『The Endless Summer』は去年の秋出したので、まだ夏を迎えてない。「創作意欲はすごくあってすぐ次、となるし、周りも次々って感じになってるけど、もうちょっとね。まだ新譜気分でいさせてくれよって感じです」
・アンコール。「はあ、思えば…」と言い出すので弦楽ライヴシリーズのことをふりかえるかと思いきや「初めてグミを食べたのもこのライヴのためのリハーサルで……」。何を(笑) ・「女性がいるってのが珍しくて。『お菓子、どうですか?』なんて……はああ、俺たち…なあ!」と佐藤さんを巻き込む ・「もう、格好よくてね。堂々としてて。俺たちもう…ねえ……」どんどんうつむく。おもろい…… ・今後は道場破りシリーズもやりたいそうです。先輩の胸を借りたいし、久しぶりに一緒にやってみたいひともいるし、とのこと。柔道着で待ってるそうです。待つのか
(セットリストは高橋さんの更新待ちです)
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