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2015年03月07日(土)
『地下室の手記』

カタルシツ『地下室の手記』@赤坂RED/THEATER

初演の一部ふたり芝居から完全ひとり芝居に。

美術(毎度の土岐研一さん)がより洗練されたような、と言うのが入場して舞台をひとめ見た第一印象。調度品や、その配置が整然としているさまがとても印象に残った。主人公は清潔で、整頓好き。基本的には自分を律して生きている。カップラーメンにお湯を入れて放置、と言った初演でのずぼらさがなくなった。考えてみれば、甲斐甲斐しく自分の世話を焼いてくれていた母親が亡くなった今、引越し後の地下室をあの状態に保てているのは感心するところではないだろうか。母親と住んでいた頃はゲロまみれになった服をタンスに押し込んじゃうくらいだったのにね(笑・でもその前にちゃんとビニール袋に入れてキッチリ結んでいたな)。

自分を律することが出来ると言う優越感。自分を否定した相手はその自分に値しない人物だ、自分を受け入れ(ようとし)た相手は自分を肯定してくれる人物だ。都合のいい造形により、思い出は美化される。訪問者りさの実体がない今回は、その痛みがより剥き身。生中継を始める(手記を公開する)と言う主人公の動機がより明確になったように感じた。彼は律していた自分のことなぞもういいわ、と言う状態になったのではないだろうか。「ここから出ねえぞ!」と宣言した彼の部屋は、これから散らかっていってしまうのかな。

情緒的な音楽がかかって、いい話で終わるようなふりしてそれを喝破する幕切れは爽快なようでいて苦笑を誘う。それは再演でちょっぴり、いや、ますます顕著になる。そしてふんぞりかえる主人公を見て、やっぱり感傷的になってしまうのだ。それは主人公の姿に、自分の片鱗を見てしまうからだ。人間って150年経っても進歩ないのねと身につまされることしきり…と人類のことみたいに話を大きくしてしまう自分が嫌ー! と言う罠。はい、これは変わらない自分のことですねショボン。

再演につき流れが判っているので、ニコ動等の現代的モチーフの使い方や「おれは人間をやめるぞ!」「エルフがドワーフに」等前川さんの引用の妙味もより楽しめた。ニコ動のコメントが大量に流れ、画面を埋め尽くす様子がホワイトノイズのように見えたのは新しい収穫。あとパッと見より段取りがかなりありそう…舞監さん大変そうだなあと思ったり(笑)。音響と照明のタイミング、殆ど手動で合わせてってるよね? いくら稽古で詰めてても臨機応変必須、その鬼っぷりに恐れ入る。そういえば安井さんはかつて鬼の役をやっていたな(どうでもよい連想)。

前川さんの3月8日のツイートを読んで強く頷く次第。そして「再演されることで完成に近づいていく戯曲」と言うものは、それだけ芯が強いのだ。