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2014年02月14日(金)
『新しき世界』

『新しき世界』@シネマート新宿 スクリーン2

twitterのTLであまりにも評判で……新宿の金券ショップで前売り券が800円で叩き売りされてるよと言う情報もtwitterで教えてもらった。感謝だわ……。しかもこれ、初日開いてからやたらと売れだしたのに店側があれっと思ったのか、しばらくして値上げされると言う珍事が(笑)。口コミってすごいですねえ。と言う訳でチケットも購入し、いつ行けるかとやきもきしていたところ、大雪で仕事早くあがっていいよ〜となったので喜びいさんで出掛けて行きました。早く帰ることの意味を履き違えている。

フロント企業化した大型犯罪組織の会長が不可解な交通事故死を遂げ、後継者争いが勃発する。組織に送り込まれて八年、ナンバー2のひとりに絶大な信頼を得る迄になった潜入捜査官に新たな指令がくだる。その作戦“新世界プロジェクト”は、当人たちを予想もつかない新しき世界へと導くことになる……。

いや、これは………口コミに感謝だわ!!!!!韓国ノワールにはてんで疎かったのですが、これにはヤラれた。シビれた。ひとの感想(皆熱い!下にリンク張っておきます)読むのが楽しくてもう私が何書いてもなって気分になっておる程ですが、備忘録としても書いておく。以下ネタバレ全開です。ヤー!

とにかくホンが面白い。構成が見事。物語の余白と、その余白を埋めるほんの少しの情報、登場人物たちの語らぬ胸の内と、それが明かされるタイミング。手札の出し順が絶妙です。捜査官、その上司、ナンバー2である“ブラザー”。彼らの出自や出会いは時間通りには出てきません。彼らはどういう人物なのか?何故そんな言動をするのか?その冷酷さの裏には何があるのか、彼らがこういう関係になる迄、どんなことがあったのか。物語が進む途中で、或いは物語の終わりにするりと滑り込むほんの少しのエピソードにより、それらはある種の回答と、新しい謎を呼ぶ。監督・脚本を手掛けたパク・フンジョンによるとこの作品は三部構成の第二部にあたるものだそうで、残りの二部も映画化したいと言うヴィジョンはあるとのこと。うわー、観たい!観たいです!

事故は仕組まれたものかそうでないか、遂に明かされることはないのですが、個人的には(そして現時点では)チョンチョンが仕組んだものだと判断しました。警察の可能性も消せないが……。でも、あの最後のシーン。六年前の彼(チョンチョン)ってアホの子チンピラみたいだったじゃないですか…それが六年と言う短期間でナンバー2の地位に迄上り詰めるって、実は相当立ち回れる人物の筈。余程の才と野望、非情さがないと…警察(カン課長)との取引や、スパイや裏切り者への仕打ち等、そう思わせられるところはあるにはあったけど、確信に到った要因はこの最後のシーンに依るところが大きい。で、そんな非情なチョンチョンがジャソンに対してはああいう選択をしたってところがまたグッと来る訳です。ジャソンが潜入捜査官だったと知ったときのチョンチョンを思うと胸が潰れるわ。

てかあのシーンを最後に持ってくるって構成がな!ジャソンがあんなに屈託なく笑ってるの、あのシーンだけじゃないか…どんだけ遠いとこに来てしまったかって話ですよ……。

こういった「ヒントの出し方」が絶妙なのです。韓国華僑であるチョンチョンとジャソンの関係性、厳しい儒教思想、「韓国では目上のひとの前では煙草を吸わない」と言った(TLで知った。有難い)礼儀…知れば知る程、気付けば気付く程膝を打つ場面が増える。チョンチョンが自分のルーツを誇りにしているのだろうなと思わせられる、食事のシーンもよかったなあ。抗争も銃はあんま使わなくて刃物(ドス?ドスなの?柳包丁みたいなの。怖い!)と金属バットなんですよね…これもお国柄か。ハリウッドリメイク決まってるそうだけど、ここ銃になっちゃうだろうだな〜金属バットってのがいいんだよ!

そうそうバイオレンス描写がめちゃドンズバだったことも記しておきます。あのエレベーターのシーン!逃げ場なし!銃なし!刃物あり!建設中のビルから転落する死体の風景!釣り堀沼にうつ伏せで浮かぶ死体の風景!あと死体をドラム缶にセメント詰めする際、死体にもセメント呑ませておけば海に沈めても浮かんでこないんだねって要らぬ知識も増えたわ…あの海いくつのドラム缶が沈んでるのかしら……(しろめ)。ちなみにPG12だったけど本国ではR19だそう。この差は何。

そうなのよ、チョンチョン刺されるだけ刺されて即死出来ずにしばらく生きてるってのも巧い演出だと思ったよ…酷い。で、病室での様子がさ!ちっちゃい切り傷がいーっっっぱい手や顔についてるってのがまたさ!ああ!辛い!と言いつつ微笑しているような自覚はある。映画だからこそ味わえる倒錯ですね!リアルではイヤです。フィクションって素晴らしい。そして葬式の様子からしてチョンチョンて身寄りないんじゃないのと言う…だって喪主がジャソンだったじゃないの……。

チョンチョンの病室で呆然とするジャソンの、アップから退きのロングショットが素晴らしかった。カメラ目線と言うフィクションでの違和を逆手にとる演出。

それにしてもジャソン…TLで小藪小藪言われてたけど(…)(追記:小薮と呼ばれていたのはジュング役のパク・ソンウンだったことが後に判明)個人的には京さん(ex.第三舞台)に似てると思い、そうなるともういろんな意味でヒヤヒヤしていつバレるかと気が気じゃなかったですね…いつボロが出るかと(京さんは屈託なくやらかすと言うイメージ刷り込み)。それがあんなことになろうとは。と言うか、あんな道を選ぶとは。しかし他の選択はなかったよな…これチョンチョンだけでなく、カン課長も背中を押したと思うなあ。そうして自分の出自を知る人物がこの世にひとりもいなくなる(ここでまた謎があって、奥さんは彼のことをホントにヤクザだと思っているのか実は捜査官と気付いているのか微妙なとこなんだよなー。何せカン課長からの差し金ですし)ことの孤独よ。会長になってもちっとも嬉しくない!だいたい会長になるために任務を果たして来たんじゃない!疲弊と悔しさしかない!これからどうすんの!続編あったら奥さんも死んじゃう気がする…それはあまりにも辛い…しかしそうなるのがノワールですよ!

あああ、落ち着いて書こうとしてたのにこの有様。もう無理だー!(投げた)以下おぼえがき。

・まずは感想リンク。素晴らしい!読めば読む程漲ります
 A Smoke After The War - IT GETS BETTER
・こちらはtwitterのまとめ。いや今回ホントtwitterのいいとこ再確認した
 映画『新しき世界』の感想をまとめてみました - NAVER まとめ

・それにしてもあのチョンチョン役のひと(ファン・ジョンミン)が〜うわーん!私はこっちの沼におちましたね(今いろんなことが頭でうずまいている)
・アホの子と残忍なナンバー2の二面性…うわあああん
・しかも何よあのプレゼント!バカー!(泣)
・どこそこで言われてるけど貴乃花に見えるときがあり…あの髪型と言い。そしてときどき中村獅童や山本太郎にも見える。特に六年前のチンピラ時代
・そのうえ左利き。このままでは中のひとにもハマってしまいそうな恐れが

・そしてジュング役のひとはアリキリの石井正則に似ていた
・しかしなんだかんだでジュング、素直って言うか貧乏くじって言うかで憎めなかったわ…最期の腹据えた態度にも高感度アップですよ
・そしてあの小沢一郎に似てるおっちゃんどっかで…て思ってたら『KT』で金大中役だったひとね!パンフ見てあああ!と
(追記:その後いろいろ調べてたらジュング役のパク・ソンウンも『KT』に出演してたとのこと。ど、どの役!)

・しかし私しばらく囲碁の先生と奥さんの区別がついてなくて え?え?てなってたからあーやっぱもう一度観直したい……

・それにしてもハリウッドリメイク決まってるって、誰が撮るんだろう+誰が出るんだろう
・TLや上記感想リンクでも言われてたが確かにベンアフ撮ったら面白そう!『ゴーン・ベイビー・ゴーン』『ザ・タウン』を撮った彼なら…ジェレミー・レナーがチョンチョン役やればいいじゃーん
・あっそうだよジェレミーも左利きだもんね!ああ楽しい妄想
・いや左利きってのは私の趣味で、ストーリー上は右利きでも全然問題ありません……
・舞台はボストン!移民はアイルランド!スタジアムはフェンウェイパーク!
・それまんま『ザ・タウン』やん!
・やだどんどんベンアフ監督で観たい思いが膨らむわ
・ジョソン役は誰がいいか……たたずまい+顔だけならJGLか(笑)

しかし雪なのに結構ひとおったで…皆ひとり客でな……(笑)男7女3くらいの割合であった。休日や時間帯によっては変わるかも知れない。終映後余韻に浸ったまま他の客の様子を眺めていたのだが、ポワーとした表情で席を立ち、ロビーにある映画評の切り抜きが張ってあるボードに群がるひと多数。パンフ買うひと多数。