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2014年01月15日(水) ■ |
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朗読「東京」『咄も剣も自然体』 |
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芸劇+トーク ――東京を読み 東京を語る―― 朗読「東京」『咄も剣も自然体』@東京芸術劇場 シアターイースト
初日は五代目柳家小さん『咄も剣も自然体』を松重豊×千葉雅子で。演出も千葉さん。いやー、よかった〜…じわりと心に沁み入る一夜。
舞台後方に高座。屏風と座布団に暖色照明が当たっている。その前に椅子とサイドテーブルが二脚ずつ。テーブルにはコップと、上手側のみ急須と湯呑茶碗。一升瓶を持って登場した千葉さんが「へいらっしゃい!」、ひと足早く入場していた松重さんが「寒いねぇ!」。上手に松重さん、下手に千葉さんが座る。「いきなり日本酒かい、とりあえずビールってのはないのかい」「何かあぶりましょうか?」コップに酒を注ぎ、軽口を交わし乍らテキストのページを開く。小さん師匠が軽妙に東京の風景を語りだす……。浮かび上がる大正、昭和の風景。古地図がみるみる立体化していくかのよう。
いやー、この導入、粋でした。アドリブぽかったな。池袋は東口に西武、西口に東武でややこしいねえ、芸劇は東口かい?(芸劇は西口です松重さん…)なんて。千葉さんは目白の居酒屋と想定していたが松重さんは池袋だと思っていたことが後のトークで明らかに(笑)。
小さん師匠のエッセイを再構成したテキスト。初めて知ったことも沢山あった。長野からの上京、関東大震災、浅草から目白への転居、剣道の心得、弟子入り、先代小さんの教え、かみさんとの出会い。陸軍に入隊、演習と言われて出掛けた先は二・二六事件。自分たちがクーデター側だと知ったのは警視庁を占拠してしばらく経ってから。二度の出兵話で語られるのは、戦争の悲惨さではなく暮らしの風景。満州の餃子のおいしさ、ベトナムで見掛けたバカンス中のフランス人。敗戦後の引き揚げ船の様子も内容はかなりヘヴィーなのだが、「それよりも帰れる嬉しさの方が大きかった」。徴兵された噺家の名を幾人か挙げ、「噺家は戦争に行っても死なないんです」。
松重さんの語り口がいいんですわ。穏やかな求心力。賢い飼いいぬ、師匠、喧嘩ばかりしていた妻。彼らは突然いなくなる。散歩から帰ってこなくなる、急死してしまう。淡々と離すその口調の裏に寂しさが滲む。笑いの裏の陰がちらつく。千葉さんは、居酒屋の主人と言う聴き手の役割を担いつつ、場面によっては話のなかの登場人物になる。師匠との思い出を語る主人であったり、生代子夫人であったり。生代子夫人の登場場面面白かったなー。『ニュー・シネマ・パラダイス』のテーマが流れて、白い照明があたって、遠い目をする千葉さん。しばらくして「ガラじゃないっ!!!」、師匠との言い争いに突入。
警視庁に籠城中、命令されて『子ほめ』をやらされ誰も笑わなかった話、名人と言われた蕎麦すすり芸のため、蕎麦屋に入ると「実際はどう食べるのか」と注目されて困ってしまう話も印象的でした。個人的にはお孫さんたち(小林十市、柳家花緑)の活動を観てきているので不思議な気分にもなりました。十市さん、ブログに目白の話よく書いてたなあとか。花緑さんもいらしてました。
おっ、もうこんな時間かい。それじゃあお勘定。釣りはいらねえよ。毎度っ。お寒いんで、気をつけて。あっと言う間に時間は過ぎて。ガラガラと言う引き戸の音が聴こえるようでした。
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終演後、企画監修である川本三郎氏を聴き手に行われたトークも面白かったです。以下おぼえがき。記憶で起こしているのでそのままではありません。
千葉:もともと落語が好きで、東京を描いたものを…と依頼されたときもうこれしかない、と 松重:田舎者ですから小さん師匠の落語を実際に観る機会はありませんでしたが、今はYouTubeで昔の映像がいろいろ観られるんですよね。それを観て…売ってるもの(DVD)買って観ろって話ですが(苦笑) 川本:松重さんは『しゃべれども しゃべれども』で噺家に弟子入りする役を演じてらして
千葉:読んでいくと実感しますけど、東京って軍都だったんですね。今ミッドタウンがあるところは防衛庁だったし… 松重:今娯楽施設になってるところ、だいたい軍の施設跡ですよね。(導入部で話題に出た)巣鴨プリズンもそうだし(サンシャインシティ)、青山劇場も確か…… 川本:そう、そう。演習は井の頭公園って出てきましたけど 千葉:井の頭公園から防衛庁跡、つまり六本木迄行軍って、すごい距離ですよね。昔なら普通か…… 川本:普通に街の中心に軍の施設があり、兵隊さんがいた。関東大震災で下町を離れたひとたちが西に流れてきて山の手が出来て… 松重:田舎者ですから(松重さんこれ連発してた)わからなくなっちゃうんですけど、山の手と山手線ってどう関係があるんですか?山の手じゃないところにも通ってますよね (その後話が逸れていったところ、「それで、山の手と山手線は…」と引き戻してウケていた。余程気になっていた様子・笑)
川本:娯楽は下町のものだった。落語、歌舞伎、相撲。おじいちゃんにつれていってもらうとかして、代々引き継がれていった。山の手には官僚や教師、役人が住んでいて、下町文化がない。歌舞伎を観に行くなんて!と言う感じ 松重:小さん師匠が長野から出てきたと言うのは意外でした。落語家は代々江戸っ子なイメージがあったので 川本:いぬを飼うと言うのも山の手から。庭があるお屋敷で。下町はねこですね。長屋だから犬小屋が置ける庭はない、ねこを飼う 松重:飼っているいぬの話、出てきましたね。お父さんが浅草に馴染めなくて目白に引っ越して…下町の芸である落語をやり乍ら山の手に住んでいる。面白いですね
川本:猫のホテルって劇団名、面白いですねえ。どういう由来で? 千葉:演劇仲間が、少女マンガみたいな芝居をやろうってことで、少女マンガによく出てくるモチーフから、猫とホテルを…… 松重:(すかさず)ぜんっぜん違うじゃないですか、詐欺じゃないですか!僕が客演したのだって、談合で、買収で…(以下『電界』のあらすじを語る) 川本:(困惑笑)
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