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2011年12月17日(土) ■ |
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『ルート99』 |
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さいたまゴールド・シアター『ルート99』@彩の国さいたま芸術劇場 小ホール
ううむ、ゴールド・シアターハズレないわ…素晴らしかった。岩松さんもおっかなすごいわ。岩松さんの作品、最近戦争について書くことが多かった様子のここ数本を見逃していたので、今のモードはこうなのかといろいろ考えるところもあった。そしてそれは、岩松さんの厳しさの端々から垣間見える、対象への愛情をも感じるものだった。若者の思いに寄り添い、年長者へ敬意を払う。「常に戦前としての戦後を用意する」戦争への静かな怒り。当然岩松さんなので戦争反対とか声高に叫ぶものではなく、その状況におかれた生活者の日々を描く。一触即発の人間関係、コップに張られた水の表面張力のような状況を描くのが得意なひとだが、それを戦争に適用すると、語弊があるかも知れないがこんなにもしっくりくるのかと驚きもした。
外国の軍用基地がある特殊な土地に暮らすひとびとは、籠のなかの鳥のようでもある。鳥が籠から飛び立つとき、彼らはどこ迄生き延びるか。一幕終盤のあの台詞を、劇団最年長の重本さんに用意したところがもう岩松さんの恐ろしさ。完璧に憶えてはいないがニュアンスとしては、「移動するときには、その本人に覚悟が出来ている。だから動く、それで命を落とすことになっても。私は移動することが出来ない、身体が既に動かないのだから。それは幸せなことだ。覚悟しなくてもいい」、と言ったようなことだ。もう動けないので受け身でいるしかない。
しかしその台詞を重本さんが口にすることで、その恐ろしさが感動に変換される。覚悟しなくてもいいと言うが、重本さん演じるミラにはあるがままを受け入れる覚悟がある。ゴールドシアターならではのマジックだ。この土地に生き、この土地で死ぬ人物の見る鳥の姿。岩松さんは鳥をある種の象徴として登場させることが多い、そこには愛憎が滲み出ていて微笑ましい。岩松さんの芝居で鳥の話出てくるとせつなくてにっこりしちゃうな。
岩松さんならではのユーモア溢れる言葉も多く(「よ、よんく……!」に大ウケ)、それを楽しみ乍ら格闘する演者と蜷川さんたちの余裕も感じる。そう、余裕がある。劇団員と演出家がもめるシーンや若者をからかうシーンは、おばちゃんたちのかしましさがもうすっごい鬱陶しい…このパワーは歳とらんとゲット出来んよ、見習うべきなのかどうなのか(笑)。ネクストシアターの役者も参加しているが、彼らとの対比も面白く観られる。小ホールの機構を存分に利用し(何せ岩松さんの大好きな階段もある!)、舞台の奥行き、客席上の足場も使う。彼らはゆっくり歩き、ゆっくり階段をのぼりおりする。座布団に座る姿は、正座しているときの方が楽、とすら見える身体がそこにある。そのゆったりした身体に即しているからだろうか、3時間30分の上演時間が全く長く感じられないのだ。勿論そこには岩松さんの話運びの巧さと(季節柄ぴったりな『忠臣蔵』も盛り込んできた!)、それを区画整理する蜷川さんの手腕もあるのだと思うが。せつなく豊潤な時間を過ごせました。
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■クリスマスケーキやオードブルも予約受付中だった 『ザ・ショウ・マスト・ゴー・オン』のときはすぐ駅に向かってしまい、さい芸のどの辺りがリニューアルしたか判らなかったので今回早めに来て劇場をうろっとしました。外観では変化ないように見えましたが、カフェペペロネのレイアウトがちょっと変わってたかな。そこでおひるごはんを食べたー、相変わらずうまかったー。さい芸はクリスマス仕様で、夜になったらイルミネーションの他にキャンドルも飾られてて綺麗でした
■ガレリアでは ゴールド・シアターの写真展をやっていました。アラーキーの撮影した劇団員の写真もあり格好よかった。各作品への寄稿文もパネル展示されており、岩井秀人さんのエッセイも顔写真付きであってニヤニヤした…依頼された文字数大幅にオーバーしたんでカットされまくったってやつ(笑)このテキスト好きなんだよ……全文はここで読めます↓ ・【エッセイ】さいたまゴールド・シアター第4回公演『聖地』――ハイバイ 岩井秀人 あー『聖地』また観たいなあ、再演してくれないかなあ
■てか 与野本町の駅周辺がリニューアルしててヒィとなった。ガチャパン売ってたパン屋さんがなくなってた(泣)
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