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2011年08月20日(土)
『和田誠展 書物と映画』『奥様お尻をどうぞ』

『和田誠展 書物と映画』@世田谷文学館

質量ともに充実、これは面白かったです!原画も装丁もポスターも、和田さんの絵が、その絵の性質を表すように整然とテーマ毎に展示されている。映画と音楽、それにまつわる書物=装丁の仕事。

ポスター制作の際の指定紙や映画撮影用の絵コンテもありました。ずっと手掛けているこまつ座の宣美、いちばん最近の『泣き虫なまいき石川啄木』も展示されていたのですが、今でも色は指定で出してるんですね。原画と版下を一度に観られて嬉しかったー。指定の文字が、あの和田さんの文字でした。あたりまえのことだけど感動したなあ。

モノクロ画もカラー画も、無駄な線や色がひとつもない。マットな色調と均質な線で、対象のキモをしっかり捉えている。鋭さと優しさが同居する目線。

カットも多数展示されており、連載等で描かれた好きな映画の名場面が並べられているセクションは壮観でした。ひとつひとつじっくり観て、あの字で書かれた俳優たちの名前を確認して…じっくり観られてよかったー。気が付いたらすごく時間が経っていた。慌てて下北沢へ移動。

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『奥様お尻をどうぞ』@本多劇場

くーだーらーなーいー。あー面白かった、アホ程笑って頬骨が痛い。上演前ケラさんがしつこいくらい「この手のものが笑えないひとは絶対来るな、チケット代の無駄だと思いそうだったら絶対買うな」と予防線引きまくってたのは正直ちょっとズルい、と思っていたのですが、結果面白かったので私はいいです。まあでも怒るひともいるでしょうなあ、ははは。以下ネタバレあります。

滑稽と悲惨は紙一重だと言うのは現実でもあたりまえのことですが、怒りをどれだけ笑いとして描けるかとなるとなかなか難しいものです。今回の主なモチーフになった原発ネタは流石にテーマがデカい、難物。不明瞭な部分も多いですからね。よってストーリーは原子力に替わる発電エネルギーをいかにバカバカしいアイディアで生み出すか、と言う流れ以降の世界は見せない。これ迄何度も世界の終わりと人類が滅亡する物語を描いてきたケラさんが、敢えて「どうやって終わるか」を描かなかったことに興味がわきました。

とにかく猛烈なバカバカしさで終始笑っていた分、時折挟み込まれる深刻なひとことでそのバカバカしい笑いの風力が一瞬落ちるのが惜しいと言う気もしました。笑い飛ばすにはまだまだ重いテーマと言うことだ。反面笑い飛ばさないとやってられないと言う悲壮さを決して表面に出さなかったことは救いでもあり、怒りの大きさを表していたように思いました。それがポップで軽やかなものとして表出されるのはケラさんの作品ならでは。

役者陣もよかったー。いやもうようやりきった…並行する世界のブリッジとして大倉くんとイヌコさんが相当機能していて、ここらへんは流石阿吽の仕事っぷり。ケラさんと長くやってるナイロンメンバーがいるのは強い。どうでもいいが通路での芝居が多く、随分近くで大倉くんをまじまじと観ることが出来たのだが肌綺麗ねー!今回何故か(笑)ヌード写真も披露してるのですがこれがまた美しく撮れててちょ、大倉くん綺麗…!と釘付けになってしまったよ。紙ちゃんのヒロインもかわいくてたまらん!無茶やっても下品にならないところもいいわー。

あとあれよ、古田さんの歌でZIN-SAY!の「オールナイトロング」が聴けるとは…!ええ、金玉が右に寄っちゃった〜♪のあれです。違う意味で感動した…何でこの選曲。しかもなんか、音を伸ばすとこ卓球の唄い回しに似てたんだよ!古田さんあれは意識的なの?たまたまなの?あー卓球と瀧、観に来たかなあ。来ればいい!

そういえばひとつ気になることが。あの客いじり(「こんな芝居観に来るんじゃなかった!帰りたい!」)の部分、私の一列前のひとで肝が冷えたのだが(笑)あれって毎回同じ席なのかしら。アフレコが女声だったけど、あの席にいるのが男のひとだったら男声版のアフレコを出すのか、それとも毎回席は違ってて女性客を狙っているのかどっちなんだろう。

とまあ感想をいちいち書くのも野暮だなあと思う程にひたすら笑った舞台でありました。笑うって楽しいね。

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原発をモチーフにしたコントと言えば、シティボーイズのものがありましたな。当時も笑って観たけど、今は笑えないなんてこともない。現実とそんなに変わらないんだもの。

シティボーイズミックス 原発コント1/2


シティボーイズミックス 原発コント2/2