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2010年12月12日(日)
『砂町の王』

THE SHAMPOO HAT『砂町の王』@ザ・スズナリ

ううー、引き続き「誰かの願いがかなうころ あの子が泣いてるよ〜♪」な話です。し、しんどい。流れとしては『立川ドライブ』に近い。場面転換も多い。サスペンス的な要素もある。凄惨な場面の描写が丁寧で長い。以下ネタバレあります。

誰かの願いは誰かが死ぬこと。泣いてるあの子は失意と恐怖の中殺される。人生の最後の一瞬が、絶望であることの恐ろしさ。途中どんなにつらいことがあっても、今際の際が温かいものであれば生きてきた甲斐もあったと思えそうだが、これはあまりにも惨い。そして、これはきっと決して珍しいことではない。それにしても、あの殺人に到る迄の描写のしつこさ(そして殺人シーンそのものは見せないと言う丁寧さ)…おまえ見てきたんかと言う。赤堀さんてこういうの書くのホンットうまいけど、その描きっぷりがどんどんしつこくなってきてる。ここ迄つっこんで描写するようになってきてるのか…と身震いする程。

過去作品では、既に死んでいるひとを扱うことは多かった。そのひとの不在を確かめようとする、残されたひとたちの右往左往。今回は、ひとが死に至る迄の過程が描かれる。ここも『立川ドライブ』を思い出させる。そして多分、その不在を思い、右往左往する残されたひとたちと言うのが、今回の作品にはひとりもいない。それがまた恐ろしい。彼は誰にも気に留められることなくこの世からいなくなってしまったのだ。

赤堀さんは光を描く。それがどんなちいさな光であっても描く。決して排除しない。光の描写はシンプル。余計な説明がいらないと言うことなのだろう。いつの日か、説明をしなければこのことが光であると言うことすら判らなくなる時がくるのだろうか。

今回も光はかろうじて残っている。そして、やはりこちらも光で幕を降ろす。夫婦のなにげない会話に微笑む、生まれてくる新しい命があることを知って胸の辺りが温かくなる。これらは普通のことであってほしい。彼らが知らないうちに、彼らのすぐ近くで起こっているどす黒く恐ろしいものにとりこまれないでほしい。ひたすらそれを願って暗転の中暗闇を見つめる。光を決してなくさないことはそれこそ、赤堀さんの願いなのかも知れない。それでは、その陰で泣いているひとがいるのだろうか?ここ迄考えることになる。

赤堀さんが光を描かなくなった時のことを考える。その時彼の劇世界はどう変貌するのだろう。今後が怖い。今の時点では、見続けようと思っている。

しかしこれ、ホンを書きあげる迄の過程だけでなく、稽古の過程を考えても気が滅入る…そんなん観客が考えても意味ないのだろうが。役者さんたちもしんどかっただろうなあ、特に日比くん。村岡さんも。圧倒されるを通り越して具合が悪くなる勢いでした。なんでこんなもん日曜の午後に観てるんだろうと迄思ったよ!いやあキツかった……。ナトリウムライトを使ったオレンジ色の風景の不気味さ、真夏の熱を真冬に感じる錯覚、と演出面でも効果的なものが沢山ありました。

あ、あと久々に、劇団公演で飛び道具ではない役(笑)の赤堀さんを観た。

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時間が出来たので急遽シモキタにとんでって、当日券でなんとか観ることが出来ました。今回の公演、気付くのが遅かったので予定がたてられなかったんだよー(泣)。DMも来ないしメルマガも来ないしチラシも折り込みで一度も見なかった(今日劇場で初めて実物手にとったよ…)。当日配布のリーフレットにいつもは載っている、赤堀さんのコメントがないのも気になりました。まあこれは単純に書かないと判断したからないのかも知れないけど。制作が大変なのかなと妙なところが心配になってしまった…作品がよかっただけに公演に気付かないひとがいたら残念だな。

来年『沼袋十人斬り』が改訂版として再演が決まったのが嬉しい。公演中止日にあたって観られなかった(振替日も結局中止になった)のでね…時期が時期なんで、またインフルエンザには気を付けてくださいマジで。楽しみに待ってるよー。