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2010年11月20日(土) ■ |
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『母を逃がす』 |
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大人計画『母を逃がす』@本多劇場
いやーよかった…いい話過ぎて夢に出そうだ。休憩なし2時間半の芝居って久々だった気がするんだけど、長くもなんともない濃さです。そして自分はこういう流れがしみついてるんだなと思ったし、大人計画ってこの手のがしっくりくる…幕間に休憩入って飲食して、って呑気に観られるものではないと思う……。いや、休憩入る芝居がよくないと言うのではなく、大人計画作品の持つスピード感、どんより感、どうしようもないせつなさは一気に過ぎ去るもので、のんびりした娯楽の心持ちでは見づらいと言う話。でもそれが観劇と言う娯楽として成り立つ松尾マジック。やっぱりこのひとってすごいなと思う。そして当然演者が素晴らしい。
特殊な話ではない。きっとどこにでもある話。そして続いていく話。これって初演時『ヘブンズサイン』の次に発表された作品で(間にニッソーヒ『ふくすけ』再演があった)、世界を呪い続け、笑いとともに破滅を祝福する光景を描いてきた松尾さんが、現状を突破しようともがくひとたちの姿を描いたことにハッとさせられた記憶がある(思えば新井亜樹さんが大人計画の舞台に立ったのは『ヘブンズサイン』が最後だったような)。しかし突破口は悉く塞がれ、「飲み込んで、飲み込んで、……生活は続く」のだ。その間に「少し困って、少し笑って」。ファンキー!宇宙は見える所までしかない。死ぬことを選べない、選ばなかったひとたちの行く末だ。
初演では一本役だった松尾さんが大神で、一本を公園くん。伊勢さんだった経理主任を少路くん。あ、あとこれ大事!密さんが演じた母を池津さん、池津さんが演じたリクを紙ちゃん。あとは同じかな。演者が年齢を重ねたからこその説得力も厚みを増しています。蝶子が再び修学旅行に紛れ込めなかった悲哀もますます出るし(笑)、雄介のリーダーにならなきゃ!って空回りも痛々しい。このどうにもならなさ感は、年月を経たからこそにじみ出るものでもあり、作品の普遍性をより強固なものにする。
それにしても公園くんの化けっぷり!あんな黒くて悪くて格好いい公園くん初めて観たわ、つうかしばらく誰かわかんなかった程で…役者ってこわいわー。少路くんもすごかったけどな…(笑)このふたりは観乍ら「ええと、今回の出演者は誰と誰で、あのひとはあの役だから、残るは……」と消去法で気付いたくらいでした。化けるねー!
黒くて悪くて格好いいと言えばクドカン。自分は役者のクドカンがいちばん好きかもしれん…『クワイエットルーム〜』でも持ってかれたもんなあ。あの自分の中の黒さをどうにも出来ない人物のせつなさがもうね……。良々とのコンビはホント、愛らしく悲しい。どちらが欠けてもふたりは生きていけない。でもいつかはどっちかが先に死んじゃうんだよ。このどうにもならなさもせつない。
カーテンコールもよかったです(笑)。いい再演だった…そしていい劇団公演。プロデュース公演で同じことが出来るかと言うと?そういえば、今回の公演は久し振りにゲストなしだった。
その他。 ・猫背さん出たの嬉しかったんだけど当初はキャストに入ってなかったよね、どういう経緯だったんだろう ・オーディションに受かったひとが出演ってのがなくなったってこと?それとも序盤出てきた浮浪者?が新人だったのかしら。でも配役で名前出てなかったな ・松尾さんのダンス最強 ・紙ちゃんがいつにも増して白かった ・吐夢さんがいい具合に太っててブタ吉って役にますます近付き……(苦笑)てか最近体調崩してたんじゃなかったっけ?(クロワッサンのエッセイ参照)まあそれですぐリバウンドしたって書いてたけど大丈夫ですのん
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