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2010年03月30日(火)
『Festival Neo-Voice #1 ヴォイスの挑戦』2日目

『Festival Neo-Voice #1 ヴォイスの挑戦』2日目@青山円形劇場

巻上公一さんと天鼓さんの企画による「声に何が出来るか」と言うフェスティヴァル。2日目のこの日はチャクルパホーメイ+山川冬樹の『ホーメイ交響詩』、ボロット・バイルシェフ+梅津和時+佐藤正治による『アルタイの英雄叙事詩カイ』、巻上公一×田口ランディのアフタートーク、と言うプログラム。

チャクルパホーメイは巻上さんの教え子さんたちだそうです。彼ら4人が登場して、ホーメイにとどまらずいろんな声を出す。しばらくして山川さんが出てきました。断髪後初めて観る山川さん。なんだか縦ロールになっていました。馬頭琴を弾き乍ら唄う、使っている弓は髪の毛のものではなかった。いきなりトップギアで倍音出るのがすごいなー。助走ほぼない、みたいな。でもこの日の声は至って柔らかく優しいものでした。あああ、4月1日の『トカゲラウンジの3人の住人たち』観たかった……。

休憩中に見掛けた、私服に着替えた山川さんはとても穏やかそうな雰囲気のひとで、ちっちゃなおんなの子の頭をなでていた。なんだか不思議な感じ。

アルタイからやってきたボロット・バイルシェフ。カイとはホーメイ、ホーミーとも通じる喉歌で、シャーマンによって2000年歌い継がれて来たものとのこと。アフタートークで巻上さんが、「ロシア、モンゴル辺りは神秘主義者が多い土地柄だけど、あんなに広大なツンドラに囲まれて暮らしていればあらゆるところに神のような存在が感じられるんだろう」と言うようなことを話していた。喉歌で謡い、口琴を使い、メロディもリズムも口で出す。そして低音部分の倍音がすごい!言葉は解らないけど圧倒されたー。その上とても響きが心地よい。集中して聴いているんだけど、こちらの身体が緊張しないと言うか、堅くならない。どのくらいリハしたのかは判らないけど、途中ボロットさんが梅津さんに、ここで好きに吹いて、みたく耳打ちして、それに梅津さんがえっ僕?ここで?みたいな感じで応えたりしていた。それもとても穏やかなやりとり。佐藤さんは打楽器以外にもさまざまなものを駆使してアクセントを付けていた。

壁面にはアルタイのさまざまな景色が映し出される。センターステージの円形劇場なので、まるでパオの中で歌を聴かせてもらってる感じもしてよかったなー。アンコールでは巻上さんも参加。豪華だったー。

田口さんは登場するなりアルタイのことを滔々と語り始め、当初の打ち合わせと違ったのか巻上さんが面食らっていた(笑)。いつ終わるとも知れない田口さんの話に頷いたりんん?と言う表情をしたりしつつ、持ってきた楽器を奏でたり。おふたりはご近所さん(湯河原在住)から交流が始まったそうです。アルタイの音楽フェスに呼ばれた巻上さんに田口さんが同行し、そこで交流したひとたちの話等、興味深い前半。後半は田口さんが巻上さんにインタヴューするような形で面白かったー。田口さんはズバッと核心を突く質問、疑問をテンション高くビシバシ繰り出し、巻上さんがたじたじになる場面も。「ビックリしちゃった、巻上さんがあちらであんなに有名人だったなんて!『アルタイの息子・巻上公一』なんて言われてたんですよ!」「巻上さんどうしてそんなにいつ迄も若いの!?お肌とかピチピチだし!なんで!?」と言った感じ(笑)。「いやいやそんな」「温泉入ってるからじゃない…?(湯河原だけに)」て感じで答えつつ、「自分の声が好きじゃなかった、唄うのも苦手だった」「楽器の演奏もあんまり好きじゃない。ベースは指にたこが出来るし、コルネットは唇が腫れるからいや。テルミンは触らない楽器だから腫れないしたこも出来ない」と言ったルーツ的な話も聴けて貴重だったー。東京キッドブラザースを辞めてそのままロンドンの劇団(ルミエール&サン)に参加しちゃった話も面白かった。「空港でやってくるお客さんの邪魔をするパフォーマンスをしてたんだけど、これはイーノの『MUSIC FOR AIRPORTS』と同じ系譜です」だって。あとストレスで声が出なくなった時の話とか…これは怖い話だった……演出家ってこえー!

終始笑える楽しいトークだったのですが、「声は発した途端に、それが言葉でなかったとしても意味を持ってしまう。知性を持ったひとが聴くと意味を考えてしまうから。知性を持ったひとが意味を持たない声を発し、その意味を考えずに聴くことは出来ないか。そんな声の可能性を探りたい」と言うような話を聴いて、以前スズカツさんが書いていたことをまた思い出した。→・『転々』ツアーで思ったことへのヒント