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2010年02月24日(水) ■ |
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最近読んだ本 1 |
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振り返ってみれば矛盾とか相互作用とかを思い起こす本ばっかりだな。
■『サザエさんの東京物語』長谷川洋子 自分内サザエさんブームは密かに続いております。こちらは長谷川三姉妹の末っ子、洋子さんが2008年に上梓した“ワンマン母さんと串だんご三姉妹の昭和物語”。数学大好き、才女、菊池寛に師事、出版社に入社するも満員電車にひとを押しのけて乗れず通勤断念…と町子さんのエッセイマンガにたびたび登場していた洋子さんが長谷川家の思い出話を語ります。これがかなり重い。マンガの中の長谷川家は、町子さんのフィルターを通してエンタテイメントとして描かれたものなのだと言うこともよく判り、興味深い内容でした。 ひとみしりが激しく滅多にひとまえに出なかった町子さんは典型的な内弁慶、家の中ではかなり強力な存在だったそう。マンガに描かれていたネタの裏話(誇張やアレンジも多々あったそう)、姉妹社設立の経緯、熱心なクリスチャンであったゴッドマザーの絶大な存在感……。洋子さんは還暦を目前に独立し、新しい出版社を興します。 あくまでも淡々とした語り口。家族と言うものの繋がりの強さ、それ故の圧力、そうなるに到る逃れようのない時代背景や信仰の厚さ。家族間のさまざまな事情に、他人は決して踏み込めない。この本を単なる“暴露本”と片付けられないのは、そんな複雑な“家族の絆”を、確執と言うには軽妙に、清濁併せ呑んで冷静に写し出した洋子さんの筆致に感銘を受けるからだと思います
うーん、この流れで『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』(このタイトルどストライクって感じでたまらん)を読みそうな気がする。
■『サはサイエンスのサ』鹿野司 Twitterでとり・みきさんがつぶやいていたことがきっかけで読んだ。Amazonを見るとウチの会社の本が関連商品にあったりして、縁がなくもない(笑)。 所謂良識派が読むとカチンとくるところもあると思うけど、あくまで穏健に過激に(って矛盾してる?)、その認識の相容れなさを解決しようと努めている。人間の“気分”に惑わされない。しかし人間の“感情”に対してもきちんと向き合っている。 本文とは直接関係ないけど、よく考える「臓器としての脳」についてハッとさせられる部分があった。自分ではどうやってもコントロール出来ない気持ちと言うものがあるけれど、それは身体と密接に関係している。同じ環境や時間に身を置いていても、バイオリズムによって全く受け取り方が変わったりするのをどうにか均質に出来んもんか。出来ません。で、その周期を自分で把握出来ていれば「今こう思うのは自分の体調がこうだからだ、決断を遅らせよう」と判断出来る。ここらへん女性の方が顕著だと思うけど、それを実感させられることが増えているこのタイミングで読んだのもよかったな。 どこ迄も前向きに未来を見ている。所詮人間なんて、どこ迄あるかすら判らない宇宙に一瞬だけ存在するちいさなちいさな生物なのだ、と再認識させられてちょっと気分が楽になった
■『日本人の知らない日本語』2 蛇蔵、海野凪子 わーい2が出たよ。日本語教師の著者と生徒たちの間に繰り広げられる、日本人が無意識に使っている日本語への素朴な疑問とその回答・解説。日本文化と歴史から由来する言葉についての背景もわかりやすく載っており、目からウロコがぼろぼろ落ちる。 日本独特の家族間の呼称(妻なのにおかあさんとか、母親がこどものことをおねえちゃんと呼んだりする)にも、定義出来るルールがあるってのは指摘される迄気付かなかった。言われてみればそうだわー、ちゃんと根拠があるんですね。漢字からひらがな・カタカナが生まれ、濁音・半濁点(まる)が派生する経緯も面白かった。 生徒さんたちの母国と日本の慣習の違い等もエピソードに盛り込まれています。タイとベトナムの干支にはねこがあるんだって、いいなあ。鬼のパンツが何故とら柄かって話も面白かったー。 日本語を学ぶのは、仕事や引っ越し等くらしの事情が関係するひとが多いのだろうけど、日本の文化に興味を持ったのがきっかけのひとも同じくらいいる様子。マンガ・アニメを言語で読みたくてやって来るひとも少なくないようです。独学で、本気と書いて「マジ」とか敵と書いて「とも」と憶えている生徒さんがいる。日本の任侠映画マニアのひとは拳銃を「ハジキ」と読む(笑)。あと外国に訴える忍者の魅力ってすごいんだね…。 ちなみに外国人がジャパナイズされることをフランスの新語で「tatamiser(タタミゼ)=畳化」と言うそうです。英語だと「tatamised / tatamized」と言うみたい。なんかかわいい。 カヴァーをとった書籍本体の裏表紙にもマンガが一本載ってます。この国って、かの国かな……(黙)
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