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おとなの隠れ家/日記
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2004年02月03日(火)
GAME OVER



ホテルの鍵がカタリとテーブルに置かれ
男は着ていたコートを脱いでベッドに投げた

私は男の横を通り過ぎ窓に近付いて
薄暗い部屋の遮光カーテンを開けた

夜の赤いタワーが目に飛び込んできた

半年前に見たタワーの方が綺麗だったように思えた
汗ばむ私の首に男の腕が絡んで
背中から鼓動が伝わってきた頃のタワーの方が


男はネクタイをゆるめ
一人がけのキャンパス地の白い椅子に腰を降ろした
背中越しに聞こえるライターをつける音
煙を吐き出す音が溜め息に似ていた

「ひさしぶりだな」

乾いた男の声に距離を感じた

「まあ座れよ」

私は振り返り男を見た
男はこちらを見ている風でもなかった


私はコートを脱いで もうひとつの椅子に投げ掛けた
男は ようやく私を見た


私は男に顔を向けたまま
男の目を見つめたまま
続けてスーツの上着を脱ぎ 
両手を真後ろに回して
スカートのファスナーを下ろし 
コートの上に重ねた

黒のヒールを脱いで白いブラウスの裾から
両手をヒップのラインにそってゆっくり滑り込ませ
腰のあたりで親指をストッキングに掛けた

「どうした?」

いつにない私の行動に男は少し驚いている様だった


私は何も言わずに
いや 言葉など思い付かなかったし
無言のまま両方の親指を下ろして
脱いだストッキングをコートの側に置いた

ブラウスの裾からのぞくワインカラーの下着が
テーブルに当てられているライトのせいで
シルクの光沢を見せつけていた


私は その姿で男に近付きタバコを取り上げ
灰皿に押し付けた

仕事用にアップされた髪からピンを3本抜き取り
首を左右に振ると
解放されたように髪がふわりと肩までおりた


私は少し腰を屈めて男の正面に立ち
不思議そうに見上げる男の顔を
胸に包み込むように抱きしめ 
そのまま男の膝に座った


男は黙っていた


男の右手が私の背後に回り腰で止まった
ブラウス越しに伝わる手の温かさに
私の心拍数が少し早くなった
男はその手をゆっくりと背中をさするように動かした
コットンのブラウスがこすれる音に
思わず息が漏れそうになった
私は下唇を軽く噛み天井を見上げた


男の手を制するかのように
左手で背後の男の手首を掴んだまま床にひざまずき
男の手を自分の左肩の上に置いた

目の前のベルトを外しファスナーを下ろしキスをした
私の左肩に置かれた手に一瞬 力が入った


舌の先で輪郭を丁寧になぞったあと
すっぽり覆った


男の手は私の後頭部へと移動し左手も添えられた
指が じわりと髪に絡んできた
男が私の頭を押した反動なのか
私が前後に動いているのか


やがて男は私の髪を軽く掴み動きを止めてた
私が離すと男は私の両腕を持ち
引き上げるように私を立たせながら自分も立ち上がり
そのまま側にあるベッドに重なるように倒れ込んだ


男は私の首筋に唇を当て胸の膨らみを包み込んだ
指に入る力が いつもよりきつい気がした


男がブラウスのボタンを上から半分外した所で
私はすり抜けるように体位を入れ替え
男の上に跨がるように乗った

「おいおい 一体今夜は どうしたというんだ?」

「今夜は特別だから」

私はそう言って脱がないまま股間の布に指を掛け男を迎えた


静かに腰を降ろした
少し痛みを感じた
十分とはいえなかったから


だんだんと動きだした
男の手を取り自分の腰に当てた
男の引き寄せる動きに合わせて私も動いた


呼吸が乱れ快感が体中に広がっていくのがわかった
その様子を感じてか男は数回重く突き上げた
声が押さえられなかった
男は私の腰を前後に激しく動かした
私は耐えきれずに上体をそらし 
先に いった

男は私を乗せたまま上体を起こし抱きしめた



「シャワー浴びておいで」

余韻に浸っていた私は その声に我に返った

「バスローブに着替えて ゆっくりしようぜ」


ベッドから降りてブラウスの残りの半分のボタンを外しながら
私はバスルームへ向かった

髪が濡れないようにキャップをかぶり熱めのお湯を浴びた
全身を素早く拭くと下着をつけブラウスのボタンを全部止めた


「はやかったな」

一服しながら 男がまだ横になっているベッドを横目に
私は椅子に置いていた服を着始めた

「なんで服なんか着ているんだ 帰るのか?」

「ええ」

「おかしいよ やはり今日の君は」


男はベッドの中で起き上がった
私は慌てていたせいかストッキングを引っ掛けてしまった
ひとつ息を吐き 丸めて屑篭に放り素足でヒールを履いた
ベッドの向側にある壁にはめ込んでいる鏡をのぞき口紅を直した
鏡に写る男がどんな表情なのか 涙でぼやけて わからなかった
こぼれそうになるのを必死で堪えて振り返り無理に笑顔を作った

「今夜でゲームは終わりにしましょう もう続けられない」

「何故?」

「好きになってしまったみたいなの 貴方のこと」


コートを手に取り 足早にドアまで歩いたところで私は立ち止まった

「ありがとね」

声は震えていたけれど きっと男の耳には届いただろう


そして私は部屋を出た