浅間日記

2014年08月03日(日) 深夜の小さな決別

引っ越しをして、約ひと月。

傾いていない、かび臭くない、綺麗な家に喜ぶのは大人。

末のHは、ひと月の間ずっと、落ち着かないでいる。
夕方になると、「ねえもうお家に帰ろう」などと言う。

今日はついに、不安が爆発した。



真夜中に目を覚まし、わんわん泣いて暴れるHへ、
「Hはお家に帰りたいの?」と尋ねると、泣き止んで、
だまって大きくうなづいた。


それじゃあ、もう帰ろうか。


幸いにも、前の住まいは目と鼻の先だ。
夜の12時にHを車に乗せて、ちょっとドライブ。




真っ暗でがらんとした室内がカーテン越しに見える空家の前に立って、
玄関にはもう家主さんがかけた違う鍵がかかっていることを確認し、
このお家はもうKさんに返しちゃったんだよ、と言うと、
Hはそのことを復唱して、小さい手でバイバイをして、気を静めた。



「安住」という言葉があったことを、この騒動でしみじみ思い出した。
安住の地を突然去るということが、どれほど不安であるかも。

そうだから深夜0時のこの儀式は、小さいHにとってとても大切で必要なものなのだ。
もしかすると今回の一度ではすまないかもしれない。

でも、私は親として、この決別を支え、寄り添えることに、
ささやかな誇りを感じている。

2009年08月03日(月) 
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