浅間日記

2007年11月20日(火) 転機か行き詰まりか

身体を吹荒れた諸々の不具合は去り、性根も入れ替わり、
過度に心配することも、慢心に陥ることもなく過ごすぞと決意。



安静中に、村上春樹の「走ることについて語るとき僕の語ること」読了。
年齢とともに衰えていく自分が大切にしているある能力とどう付き合うか、
そのことを、走ることになぞらえて書いている、アスリート村上春樹としての本である。

この人は暗喩を好まれる。だから、ご本人が意識しているにせよそうでないにせよ、
この本を、「書くことについて語るとき僕の語ること」という風に理解しても、
大きな間違いではないのではないかと思いながら読んだ。



自分は大層な能力の人間ではないけれど、自分なりに一生懸命頑張ってやってきた。そのことに嘘はない。

そういうことが、折々に書いてある。

自分に正直に向き合って心の底からそう思え、
また誰に臆することもなくそう言える生き方というのは、
実は誰にでもできることではないと思う。



氏の愛読者として応援の気持ちを込めるならば、
もしも、もしもご自身が、作家としての老眼みたいな違和感を執筆活動に感じたとしても、
−使い古されていない新品のぴったりとした言葉を探し当てられなくなったような−
行き詰まりの扉というものは、年齢を問わず誰にでも訪れるもので、
この作家は、既にそうした扉を何枚も開いてきた−自分なりに一所懸命頑張って−のである。

そうして今そこにある扉なのだから、決してそれは終わりの扉ではなく、
むしろ誰も知らない次の文学世界への扉に違いないと私は思う。

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