この辺りでは、自家用野菜を育てるのは、ごく普通のことなんである。
秋に収穫した大根や白菜やネギは、直ちに漬物となるか、 春野菜の収穫時期までもつように大切にストックされる。
寒さに弱い里芋は幾重にもくるんであたたかいところに置く。 ネギは庭先の土に活けて、コモをかけておく。 白菜は新聞でひとつ一つ丁寧に包む。 ジャガイモは暗い場所に保管しなければならない。
しかし、しょせんは自家用の貯蔵だから、限界がある。 2月半ばともなると在庫品はどれも萎びた感じになってきて、 大根はすが入り、ジャガイモは芽を出し、 白菜はとっくにみずみずしさを失っている。
そして、春間近に口にする冬野菜というのはそういうものだと、 誰ともなしに穏やかな了解が得られている。
いたみの入ったところは取り除き、 味の落ちたものはそれなりの味付けをし、大切に胃袋までもっていく。 どこにも返品しないし、誰にも半額の交渉をしない。 見切りをつけて鮮度のよいものを買い求めたりもしない。
野菜とは、どこかの誰かが手品のように供給してくれるものではなく、 自分が収穫した目の前にあるものが全てだと、そう思うことができるのだ。
2006年02月09日(木) 2005年02月09日(水) ゲームオーバーなのではない
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