2006年05月22日(月) |
全天候型人生を迎える日 |
平成18年度の科学技術振興調整費に、本年度から新たに盛り込まれた 「人工降雨を中心とした渇水対策に関する研究」というのがある。 「安全・安心で質の高い生活のできる国の実現」という柱の元に助成される。
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知らなかったが、人工降雨の研究は、終戦直後から行われていた。 そして既に日本では色々な場所−利根川上流など−で実験が行われているし、中国では既に実用されている。
原理としては、雲の中へ雨粒の核となる物質を散布する、という、 素人でも分かりやすいレベルのものである。 九州大学が、防衛大学と共同で、航空機から散布実験している。
* ファーストインプレッション。 現代版の水戦争はもう始まっているのだ、という実感。 気象操作技術はさらにすすみ、天気は市場経済に支配されるだろう、という見解。 生態系はバランスを失い、地球環境問題はさらに深刻化して、 人間の心からさらに多くのものが損なわれるだろう、という、 私にしては稀な、絶望的心境。
* 気持ち悪さを我慢して、色々調べた。 散布する物質は、ヨウ化銀とか、液化した二酸化炭素や、 ドライアイス−要するにこれも二酸化炭素−である。
ヨウ化銀−中国ではこれが散布されているらしい−は、 人体や環境への毒性が明らかになっている。
ネットでMSDS(Material Safety Data Sheets)を見ればすぐわかる。 雨を降らせるために、危険な化学物質を空から散布するんである。
そして日本の最近の実験では、液化二酸化炭素が散布されている。 二酸化炭素は、誰でも知っているように温室効果ガスの一つであって、 その放出量を抑制するために、海底に液化固定する研究が行われている。 そういう時に同じものを空からばら撒いている。 つまり、浴槽の栓を抜いたまま、風呂に水をためようとしている。
* 人工降雨という技術は、予算もかからず、簡単に実行できてしまうけれど、 その研究成果が与える影響が予測不可能な、気持ちの悪い研究である。 そういう点で、遺伝子組換え技術やクローン技術と同じ感じがする。
予測不可能であることは、悪いことに、研究者の研究者たる部分を刺激する。 しかし、自然科学や生命倫理に関わる実験というのは、 一つの専門分野だけで、実施の判断をしてはいけないのだ。
もし「安全・安心で質の高い生活のできる国」を保障しようというのなら、 私の頭の上には一滴でもそんなものを降らせないでほしいと思う。
2005年05月22日(日) 金網デスマッチ 2004年05月22日(土) 個人主義
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