2012年10月15日(月) |
てぃるのぐ建国祭(仮)・その12 |
「何しにきたの」 大人達の会話が一段落をおえた後、尋ねてみる。 「もちろん可愛い娘に会いに――」 「たてまえはいらないから。仕事があるって聞いたけど、まさか一人で来たの?」 心配になってたずねるとまさかと笑い飛ばされた。よくよく考えてみれば仕事だってお母さんの手紙に書いてあったし同行者もいるって書いてあった。 お父さんの仕事は花火職人。ティル・ナ・ノーグのお祭りで打ち上げられた花火を見て感動して、身ひとつで白花(シラハナ)に旅だった。お父さんがシラハナに在住した年はわたしの年齢とほぼ同じだから十七年の間、シラハナで修行をしていたということになる。 「祭楽しみにしてろよ。今年は最大級の花火を打ち上げてやるからな!!」 「うん。楽しみにしてる」 小さな花火は見たことがあったけど、大きな、しかもこんな大規模な行事での花火を見るのは初めて。単純な興味もあってうなずくと、そうかとぱっと顔を輝かせた。 「イオリもやっとお父さんの偉大さがわかって――」 「それとこれとは別」 ぴしゃりと言い放つと、お父さんは広げていた腕をそのままの形で止めてしまった。 「イオリちゃん、なにげにお父さんにきびしくない?」 「リオさんは娘可愛さにここまでついてこられた女の子の気持ちがわかりますか?」 可愛いって言われてうれしくない人はいないし子どもの頃は言われてとても嬉しかった。 だけど。 「『可愛い娘に何をする!』って近所の男の子を目の前でぶんなぐられた娘の気持ちがわかりますか」 正当防衛だってことはわかる。近所の男の子に瞳の色が変だってからかわれて。髪をひっぱられていたところをお父さんが助けてくれた。結果、やりすぎだとお母さんがその子の親に謝りにいくことになった。 「『可愛い娘に傷ができたら大変だ』って体術を習わされて。気づいたら年頃の男の子が寄りつかなくなった女の子の気持ちが――」 「ごめん。もう何も言わない」 なぜか謝られてしまった。
過去日記
2005年10月15日(土) 一次創作バトン 2004年10月15日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,26UP 2003年10月15日(水) 月のしずく
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