確かに、 其れは固化される物で。
永く残り続け、 自身の核心を構成する要素に、 為り得るのだけれど。
飽く迄、 其れは可塑性に富んだ物で。
頻繁に書き換わり、 柔軟に調整され、 姿を変えて行く。
真偽は。
一意的に、 良悪を定める要素でも無く。
其の曖昧さが。
不可避で、 無論、 特性に他ならないけれど。
果たして。
何を産み出すのだろうか。
「家に来た事。」 「覚えてるわよ。」
母親は。
俺に、 あの子の記憶を口にし。
「勘違いよ。」 「お母さんには会って無いもん。」
あの子は。
俺の妹と甥っ子にしか会って居ない筈だと、 そう口にした。
母の、 記憶の混乱が。
緩衝に作用する事を、 希いながら。
二十年前の僅か一日が、 脳裏に、 残り在る事へ。
感心する。
---------- References Aug.15 2002, 「安堵しても良いのですか」 Jan.04 2015, 「強く想える刻ですか」
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