見上げた夜が、 何れ程、 同じに見えたとしても。
其れは、 飽く迄まやかしで。
音感や、 温感や、 其の場の感覚に加えて。
高度や、 照度や、 時差に起因する要素も。
異なるのだ。
其れ故に。
其処に、 懸命に想いを加えては。
其の距離を、 埋め合わせるのだけど。
一度、 知って了った味は。
今後、 其の作業を妨げるのだろう。
きっと。
「案外明るいんだね。」
「そうだね。」
「同じ月を見て居るね。」
「そうなるね。」
見上げる、 其の赤茶けた月色に。
あの子から、 自然に零れた言の葉は。
繋いだ手を介して。
随分と、 増強されて終うんだね。
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