未だ、 水気など在る筈の無い、 浴室に。
確かに、 水音は木霊したけれど。
下方から響く、 其の、 水の音が。
果たして、 何を意味するのか。
其の因に。
本当は、 気づかなかったのだ。
何れ程、 五感を研ぎ澄まして。
一つ残らず、 眼前の情報を絡め獲ろうと、 居ようとも。
腕の中で、 必要以上に俯く温もりを、 訝しんだ、 其の時迄は。
音の源が。
受け容れの為に、 泉から溢れた想いで在る事になど、 気づかなかったのだ。
其れ故に。
注視のため、 余計に応答して居た、 回路が。
より強い好奇心を、 誘発して終ったのだろうか。
開き掛けの、 門扉と、 其の周囲を潤す、 想いとを。
混ぜ逢わすかの様に。
「ふふ、そっか。」
「何?」
「こうやって動かすと鳴るんだね。」
「あ、馬鹿っ。」
腕の中の温もりを、 左右に、 動かしては。
卑猥な響きを。
執拗に、 奏で続けた。
形状の変化を伴わずには居られない、 自身に比して。
殆ど、 其の外見を変える事無く在る、 相手に。
少しだけ、 悔しさを覚えたのかな。
---------- References Jun.23 2006, 「触れずに辿り着けるのですか」
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