彼方から、 此方へ。
此方から、 彼方へ。
流れ、 留まり、 発ち、 宿り。
大空を飛び交う、 其の姿も。
旅を終え。
其の翼を休める、 終着駅で。
静かに、 静かに。
瞳を閉じる、 其の姿も。
何度か。
此の目に、 映して来たけれど。
唯一。
旅路の起点には。
自身を、 重ねた事が無かったのだ。
其れ故に。
起点を、 目の当たりにして。
掛ける言葉の、 乏しい事に、 戸惑いを覚えて終う。
お帰り?
此処が始まりだ。
初めまして?
数日前に、 贈った言葉だ。
いらっしゃい?
御客では無い。
「お帰り。」 「お疲れさま。」
量る迄も無く、 重い役目を成し遂げた姫に。
退院の祝いと、 労いの言葉を掛けて。
娘に、 的確な言葉を贈れぬ、 自分自身を。
誤魔化した。
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