勘違いして居たのかも知れない。
丁寧に。 丁寧に。
間隙を埋め、 均して来たからこそ。
徐々に。 徐々に。
境の溝は、 消失して居たのだと。
けれども事実は。
其の溝を、 注視する事よりも。
自身の、 内なる存在を注視する事に、 懸命で在っただけで。
溝の存在に、 何ら、 変化は無かったのだ。
其れ故に。
自身に宿して居た、 想いの結晶を。
一つ、 実像へ変化させると、 同時に。
平行して。
「入籍して入院して出産して。」 「『この人への自信がない』と思ってた。」
嘗ての、 俺への惑いが。
頭を、 擡げ始めて居る。
何カ月振りだろうか。
「明日から来ないで。」 「退院決まったら連絡するから。」
殻に閉じ籠もる、 姫の文へ。
応じる言葉が、 浮かばず。
返信の文を、 再び、 消し去った。
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