此の眼に、 朧気に浮かんだ姿で在ろうと。
目の前の画として、 実際に手に入れた事など、 一度も無いのだ。
けれども。
何故に、 此処迄確度の高い推測として。
其の画を、 手元に手繰り寄せる事が、 可能なのだろうか。
恐らくは、 床に転がり寝息を立てて居るであろう、 其の対象へ。
着信音に気付く事を願いつつ、 電話をかけた。
只でさえ五月蠅い雄が。
普段よりも、 より酷く、 口五月蠅いのは。
きっと、 嫌だろうけれど。
今。 今日。
体調を崩されては、 困るから。
「其の儘寝て居るんでしょ。」 「う〜ん・・・。」
「ベッドに行って寝なきゃ。」 「う〜ん・・・。」
「風邪ひいちゃうよ。」 「う〜ん・・・。」
「先、寝ててね。」 「う〜ん・・・。」
「う〜んじゃ駄目でしょ。」 「う〜ん・・・。」
「起きた?」 「う〜ん・・・。」
「起きて、着替えて、ベッドに行って。」 「う〜ん・・・。」
「わかった?」 「うん、わかった。」
此の会話など、 寝惚けて、 覚えて居ないのだけれど。
姫が、 布団に入れば。
其れで十分。
おやすみ。
成る可く早く、 帰るからね。 |