確かに、 其処には平均が在って。
両極に属する存在よりも、 総じて、 中央に属する存在が多いけれど。
個々人の価値基準は、 個人から発生する物だから。
自身が、 其の分布の両極に位置しようと、 或いは中央の近傍に居ようと。
与り知らぬ事なのだ。
其れ故に。
自身と、 相手の、 社会的分布から見た、 偏りに。
自ら気付く事など、 多くないから。
想い逢う二人の、 創り上げる世界が。
俗世間と切り離された、 二人の世界として。
甘美に、 存在し得るのかも知れない。
「私を引き受けてくれる人と。」 「一緒に帰るから。」 「だから正月は帰らないね。」
姫の、 母親への返事は。
俺と過ごす予定への、 返事でもあり。
同時に、 俺への意思表示でもあるのだろう。
「その人、物好きな人ね。」 「犬や猫が好きで、物好きな人って。」 「太ってボーっとしている人しか居ないよね。」
姫の母親は。
彼女なりの口の悪い言い回しで、 其の厳しさを訴え、 暗に心配して居るかも知れないけれど。
犬や猫が好きな、 此の俺は。
痩せて居て、 どちらかと言えば激情家だと。
「驚くよね・・・」
「だね・・・」
姫と二人、 唇を重ねながらほくそ笑む。
俺と姫の認識は。
きっと、 実社会の分布の、 両極に位置するのだと。
お互い、 薄々感じながら。
---------- References Nov.13 2004, 「終着駅への誘いでしょうか」 |