姫の息子の、 思い付きから産まれた、 鋤焼と、 家族の団欒が。
殊の外、 応えたから。
心の内を、 見透かされたのだろうか。
其れとも。
口惜しさと、 落胆を、 悟られぬ様にとの想いが。
態態しく映り、 妙な振る舞いとして察知されたのだろうか。
「どうしたの?」
小鳥が、 此の身を窺う様な視線は。
案外、 早くに飛んで来た。
夕方に、 手元に届いた一つの訃報は。
自分の想い描く姿に、 一番近しい例を、 いとも簡単に突き崩したのだ。
身体も、 想いも、 裸で向き逢う聖域で。
親父の後輩が、 最愛の人を失った事も。
親父の死後にも、 大変御世話になった御夫婦である事も。
子が無い事も、 子が出来ぬであろう事も、 仲睦まじい事も。
全て曝け出し。
若くして、 奥様が旅立った事を、 姫に告げた。
「私は、小坊主より先に死なないから。」 「大丈夫だよ。」
きっと、 妙な事を言ったと。
姫も、 想って居るだろうけれど。
不器用な励ましが。
風呂の温かさより、 身に浸みる。
---------- References Aug.24 2004, 「聖域だと想ってはいけませんか」 |