其の場所は、 唯一の場所だから。
抱き合いながら。
掛け値無しの、 飾り気の無い、 想いと、 本音だけを。
お互いが、 素直に、 ぶつけて来た場所は。
此の、 風呂の中だけだから。
其れが鋭く、 互いを傷付けたとしても。
其処で産まれる、 言葉の数々に対峙して。
白刃を、 素手で受け止めるのだ。
「姫らしく過ごせるって?」
「いつも笑って過ごせること。」
「笑えなくなって来たって事?」
「ううん、二年前と比べたら一杯笑える。」
昨晩の姫が、 そう口にして。
「信じられないんだ。」 「小坊主のこと。」 「だから離れる?」
今夜の姫が、 確かにそう言ったとしても。
此の場所で産まれた、 言葉なら。
何れも、 真に値する想いで。
「俺は姫が好きだから。」 「想いが届かないのは俺のせいで。」 「伝わる迄贈り続けるよ。」 「間に合わなくて姫に愛想尽かされたら。」 「しょうがないけれど。」
奥底に在る想いを、 贈り切れぬ、 俺自身が。
精進して、 想いを伝え続ける事が、 出来るのだ。
だから。
此の、 唯一の場所で。
「じゃぁ、愛想尽かす?」
「マジで言ってるの?」
「ううん。」
そう言う冗談を言うのだけは、 止めてくれ。 |