間に流れる川を、 彼女が、 此方に渡り切る迄。
束の間の、 寝た振りをして。
高鳴る鼓動を直隠し、 背中を向けた儘。
じっと、 明かりが消えるのを待つ。
彼女は既に、 十分撒き餌を喰らったから。
化粧を落とし、 寝間着に着替えて。
彼女の温もりが、 背中逢わせに届いたら。
そっと、 牙を剥けば良い。
項に、 吐息を当てながら。
両の腕の内に、 後ろ向きの彼女を包み。
飽く迄、 然りげ無い偶然を、 装いつつ。
膨らみへ、 伸ばした指を宛てれば。
「甘えるの上手だね。」
そう口にしながら。
彼女はきっと、 此方を向くから。
策略通りに、 其の眼を見つめ。
「恥ずかしい・・・」
其の言葉を待って、 唇を重ねながら。
身に纏った物を、 一枚、 一枚、 丁寧に剥いで終えば良かったのだ。
けれども。
「もしかして。」 「ドキドキしてる?」
隠せなかった鼓動が、 彼女に、 届いて終った瞬間。
立場が、 一瞬にして裏返った。
悪戯っぽく、 瞳を輝かせながら。
「しょっぱいよ・・・」
既に汗の乾いた此の身へ、 這わせた舌を。
彼女は、 ちらりと出して魅せる。
一瞬にして蘇る、 抑え付けた筈の記憶と予感。
「久しぶりだなぁ。」 「緊張しちゃう。」
嘘か誠か、 判断付かぬ言葉を、 口にしながら。
容赦無く、 彼女は俺を口に含み始めた。
---------- References Jul.27 2004, 「如何なる存在でしょうか」 |