一瞬迷って、 一瞬躊躇して。
最終的には、 其の言葉を言わずに、 仕舞い込む。
受話器越しに伝わる、 其の行為を。
何度か繰り返したから。
其の場には。
「一緒に祝ってやろうか?」
俺からの、 其の一言を待ち望む、 言葉の欠片が。
撒き菱の様に、 鏤められて居たけれど。
其の剣先を、 飽く迄あしらい捌くだけで。
全て、 相手に下駄を預け続ける。
其れでも。
「時間作れるなら。」 「一緒に祝ってあげたいんだけれど。」
真の理由を伝えずに、 偽の理由を捏ち上げて、 舌を出した俺に。
「いつか何かのお祝い、」 「一緒にできたらいいな。」
飽く迄、 純粋に菱を捲き続ける、 彼女の方が。
互いの力関係を。
きっと、 良く見極めて居るからだろう。
わかりやすい、 潔いし、 自分を偽らないし、 正直だし。
でも、 ずるがしこい。
彼女の言う、 俺の其の寸評は。
妙に的確だ。 |