何れの結論を選択しようと、 其れは、 一つの道だけれど。
其の結論など、 既に後回しにせざるを得ない程の、 緊急発進だった。
俺に植木鉢を持たせ、 其の隙に、 逃亡を謀った脱走猫が。
大声で喚きながら、 階下で針路を左に取った事のみ、 確認して。
一向に着かぬ昇降機を諦め、 大慌てで、 飛び出したけれど。
其の姿は、 既に視界に無かった。
其れでも。
本能が、 何の経路を巡り、 何処を目的に定めるか。
行動の推測と、 追撃の為に、 身体を総動員させる。
交差点に、 道路に、 突進するかも知れない。
何の様な雄が、 待ち受け、 誘いを掛けるかも分からない。
下手をすれば、 命すら失うから。
殆ど望みを失う程の、 経過時間に。
俺は、 途方に暮れながら。
捜索の範囲を、 尚も拡げ続けた。
迷子の姫に。
酩酊した儘、 意識の無い儘、 街を徘徊する姫に。
姫の息子が、 帰途で偶然出会えた時。
例え其れが、 今別れた雌だとしても。
繁華街の暗がりで。
何れ程、 安心したか。
「良かった・・・」
僅か一言を。
どんな想いで、 姫の息子に文を贈ったか。
本当に、 理解して居る? |