もしかしたら。
其の場に居るのは、 俺だったかも知れないから。
其の場に居るべき存在は、 俺自身なのかも知れないと。
そう想ったから。
拍動が、 少しだけ速まった。
けれども。
自身の影響が、 其の場に無い事は。
自身の痕跡が、 其の場から消え去って居る事は。
歓迎すべき事だ。
俺自身の感傷など、 存在意義の無い想いなのだ。
自分勝手に振る舞う心臓を、 戒めて。
何事も無かったと、 言い聞かせる。
あの人の所で目にする、 貴女の姿。
いや。
正確には、 小さな彼の姿。
真っ先に手を挙げ、 得意そうに答えた小さな彼を。
教室の背後から、 そっと見つめる俺を想い浮かべて。
図らずも顔が緩み。
其の直後に。
何故に其の場に居るのが、 貴女では無くあの人なのか。
其の理由を想い、 強い罪悪感を感じる。
俺は馬鹿か。
俺に必要なのは、 感傷じゃ無い。
感傷を感じられる程、 俺は偉くは無い。
---------- References May.01 2004, 「少しは役に立って居るのでしょうか」 Jun.02 2003, 「少し塩辛いでしょうか」 Jun.25 2002, 「支える資格がありますか」 |