目の前に飛び交う、 鋭利な刃物が。
其の場所を弁えて、 飛んで居る事も。
刃の飛ぶ理由が。
自己防衛の為の、 精一杯の強がりで、 不安の裏返しである事も。
理解して居た筈なのに。
眼前の空間を、 血塗れにした言葉達に。
背を向けた。
一つの殻を蹴破った、 其の結果。
何十年も、 触れる事の無かった外界に、 曝される。
「三年あれば。」 「私を幸せにしてくれる男が。」 「現れるよね。」
眼前で産まれる、 言葉達は。
不器用に、 懸命に、 必死に、 其の不安を伝えようと、 形にした物で。
不安を支える役は、 俺しか担えない。
不安を吐ける対象も、 俺しか担えない。
其の使命感など、 理解して居た心算なのに。
離婚の記念日を。
姫の、 門出の記念日を。
「酔って居る様なので、メールで贈ります。」 「憤ける態度で伝わらないなら、嫌と言えば良いよね。」 「距離を置いて想いが伝わるなら、家に帰ります。」 「姫が自分の気持ちを確かめる、良いきっかけになるね。」
俺は、 最悪の結果で飾り付けた。
相手への感謝と、 自身への後悔と。
憎たらしい程、 順序良く浮かび来る想い。
貴女の家庭を壊した瞬間に、 逃げ出した、 前科と。
俺の行為は、 何の違いも成長も無いのだ。
「幸せをありがとう。」 「荷物は私の留守の時に取りに来てね。」
姫の言葉に、 眠れぬ夜が明けた。
---------- References Mar.17 2004, 「前科を消す術が在りますか」 Feb.17 2004, 「何故撥ね返せなかったのでしょうか」 Jun.25 2002, 「支える資格がありますか」 Jun.20 2002, 「償うふりが出来ますか」 |