周囲の人間で、 其の事実を知らぬ人間は。
唯一、 俺自身だった。
一番身近で、 一番敏感に、 其れを察知せねばならぬのに。
告白で初めて、 気付いた。
平然と、 彼女は言い放つ。
「一番最初に。」 「教えたんだよ?」
確かに報告は、 真っ先に手元に贈られて居た。
彼女らしい文で。
「私くらいの女性が、子供連れて、小坊主位の男と、」 「婚姻届を出してたんだ。」
「その子供、役所の人に『○○さん』と呼ばれたら、」 「『僕○○じゃないよ』と答えてたよ。」
「笑っちゃった♪」
姫の言葉に、 魅せた苦笑は。
照れ隠しでは無い。
鋭く反応すべき言葉に、 応えられぬ自身を。
恥じた訳でも無い。
其の、 幼気な様子から。
小さな胸の痛みと伴に、 想い出したんだ。
全う出来なかった、 想いと。
貴女を。 小さな彼を。
「本当に分からなかったの?」
「うん・・・。」
「鈍感!」
鈍感を装わなきゃ。
其の場で、 想いを、 見破られそうだったからなんだ。 |