意を決した想いの、 出鼻を挫かれる事など、 さほど苦では無いけれど。
挫かれた後の出鼻に、 想いが返る時。
何故此処迄狼狽するのだ。
耳元で流れる呼出音が、 一瞬の間を置いて、 録音された伝言へと切り替わった瞬間、 通話を遮断した。
仕事かも知れない。 出先かも知れない。
駄目元の呼出音は、 成就する可能性などほんの僅かで良い。
其処に残される想いは、 残念より、 寧ろ安心感だったのに。
直後に震える携帯と、 白色の着信色。
震える想いと 震える指。
発信以上に、 受信には勇気を必要なのか。
「小坊主ちゃんから電話なんて。」 「滅多にないでしょう?」
劇場で見て居た映画を抜け出して、 電話を掛けてきた貴女。
半月程前は、 頻繁と言う単語で埋められた筈の文も、 俺の呼び名も、 正確に姿を変えて居た。
其処迄、 俺は要求して居ない。
其処迄、 俺は要求出来ぬ立場。
自覚とは裏腹の想い。
「イタ電。」
「えぇ〜?」 「そうなの〜?」
最初に口から出るべき言葉は。
悪戯電話で、 きっと此れで良かったんだよね。 |