自分宛に届いた年賀状から、 一枚だけを引き抜き、 机の上に置く。
去年届いた年賀状。
葉書の裏には、 貴女が付けた大きな口紅の跡がある。
俺の唇を紅に重ねて、 初めて貴女の唇を奪った瞬間を、 想い起こした。
自分宛に届いた年賀状から、 一枚だけを引き抜き、 その隣に置く。
今年届いた年賀状。
葉書の裏の紅の跡は、 其処には無かったけれど。
俺の額に葉書を重ねて、 初めて貴女を奪った実感を、 想い起こす。
貴女の周りから、 あの男の物が一つ消えた。
たった其れだけの事なのに、 何故か大きな違いの様な気がしてならなかった。
貴女の書いた姓が、 元の姓に戻っていた。
たった其れだけの事なのに。
中に潜む一年の重みを感じて、 武者震いが止まらない。 |