人の想いが、 方向と大きさのみで構成されるならば。
或る二人の矢の先は、 長い時を経て、 寸分違わず一致する事も在るけれど。
時間変化と言う系が、 其処に介在する事で。
二人の矢の先は、 伸縮と屈曲を繰り返し、 重なり合う事は、 決して無いのかも知れない。
例え近傍で、 星の様に惹き逢う、 二つの矢だとしても。
星の様に弾き合い、 慣性に従って彼方へ跳ぶ時。
星の様に衝突し、 其の衝撃が矢の勢いを奪う時。
時の歪みが、 想いを超えて存在するからこそ。
出逢いと離別が、 転がって居るんじゃ無いのだろうか。
星の数だけ。
道に穿った穴を、 踏み固められる前に修復出来なければ。
後は只、 其処に足が嵌らぬ様、 注意して進むしか無いのだ。
掘り返さずに。
時機を失すれば。
其処に跡が残り、 其れを想いで包んで隠して、 進むしか無いのだ。
時機を見逃せば。
其処に傷が残り、 其の痛みに耐え兼ねた時には、 離れるしか無いのだ。
「相談役を放棄するつもりはないよ。」 「今度話し合いましょう。」
貴女の想いは嬉しいけれど。
既に俺の中には、 修復出来ぬ穴として顕在化した様に、 感じるんだよ。 |