産まれた嫉妬心が、 自身にとって、 決して負の想いでは無いとしても。
更に露わな怒りが、 極々自然に発生し得る想いだとしても。
「良いなぁ!」 「ずるい!」
執拗に喰い下がる想いを、 静かに、 緩やかに、 沈めて行く為に。
例え其れが、 有効な選択肢だとしても。
想いが手元から奪われて行く事に、 違いは無い。
其れでも。
周囲の感覚が、 通常の嗅覚刺激と異なる情報を放つ事に、 いち早く気付き。
其の情報を、 嗅ぎ回り、 嗅ぎ回り、 目一杯仕入れる様にして、 眠りに付くのなら。
其れが最小限の償いで、 其れは最大限の土産と成る可能性を、 秘めて居るかも知れないんだ。
僅か二日。
もし時間単位に基準を遷せば、 一日分にも満たない期間が。
二人に与えられた時間だとしても。
濃密な時間を過ごし。
そして染み付いた匂いが、 強く、 鮮明に、 残される物だとすれば。
半年近くの時間を共に過ごした物に、 宿る匂いへ。
更に強く、 更に鮮明に、 残り香を振りまく宿命を、 背負わせても構わないよね。
もし貴女から、 俺の匂いが消えてしまっても。
「お母さん・・・」 「小坊主の匂いがする・・・」
俺の匂いを胸に、 眠りについた小さな彼へ。
「お母さん。」 「これ小坊主の匂いがする。」
小さな彼が、 貴女の手から奪った其の熊の人形が。
きっと、 御休みを伝えてくれる。
---------- References Jun.18 2003, 「必要な秘密でしょうか」 |