人に備わる、 記憶を長期に渡って残存させる為の仕組みが、 睡眠時に活発化すると言うならば。
永遠に残したいと願った記憶は、 睡眠時の脳の中で、 何度も何度も繰り返し想い出されているかも知れないから。
過去の出来事が何度夢に現れても、 不思議では無いけれど。
過去が鮮明に浮かび上がる切欠は、 過去を夢に映す切欠は、 意識下に与えられた引き金なのだろうか。
其れとも無意識下で、 自身の与り知らぬ引き金なのだろうか。
「小さな彼がね、甲虫を飼ったの。」 「そしたら温泉の夢を見たの。」
「あのさ・・・」 「何で甲虫でそんな前の事を想い出すんだよ?」
貴女の想いの強さは、 人智を超えているのではないか。
いや。
貴女の体内の仕組みは、 生命の神秘をも凌駕する人類の例外なのではないか。
馬鹿みたいに、 真剣に考えを廻らせた。
貴女が記憶を呼び覚ました切欠は、 小さな彼と祖母との間に交わされた、 普通の会話。
「甲虫が交尾したんだよ!」
「もう直ぐ卵産むかもねぇ!」
相変わらず突拍子も無い思考回路に、 呆れ半分の笑い声を、 俺は止めようともしなかったけれど。
貴女の欲求不満が、 他の誰かに依って解消されていない事を知り。
少しだけ安心する。
---------- References Jan.14 2003, 「夢も形に出来ますか」 Mar.01 2003, 「これが神が与え賜う褒美ですか」 |