遙か遠くに、 貴女が住む地よりも更に遠くに、 在る人。
其の名前を知りつつ、 未だ一度も、 其の顔を見知らぬ儘の人。
見えぬ相手だからこそ、 自分の想像が相手の人物像に直結する故か。
友と呼ぶには希薄過ぎる関係だけれど、 文字だけの交換は、 不思議と弾む。
他愛も無い恋愛相談。
自身の経験と知識を、 画面を通して、 ただ相手に伝えて行くだけの行為。
俺の言葉一つ一つを、 受け止め、 噛み砕き、 悩みや迷いを整理する作業の中で、 其の言葉は産まれたのか。
「私より良い恋愛してそう・・・」
彼女の言葉に答えを出せず、 俺は誤魔化し、 曖昧な返事を返した。
良い恋愛? 良い恋愛って何?
「良い恋愛だったよ。」
例えば相手にこう伝える機会が、 存在したら?
良い恋愛の行き着く先は、 破局か、 恋愛感情の消滅か、 何れか一方だ。
必ず終焉を迎える行為に、 身体を委ねるのが、 良い事なのか。
其の理不尽な原理に怒りを覚えながら、 あの時俺は、 彼女に答えを返せなかった。
あれから丁度、 一年と言う歳月を経ても。
何を以て良しと定義するのか、 未だに答えを見出せない。
俺は良い恋愛をしているのかな。
この恋愛は、 終焉に向かっているのかな。 |